東芝や日本電信電話(NTT)、NEC、日立製作所、富士通など11社は5月31日、量子コンピュータをはじめとする量子技術の産業応用を検討する場として「量子技術による新産業創出協議会」を設立すると発表した。米国や中国で量子技術への投資や研究開発が進む中、日本企業が横断で産業化に取り組むことで、世界に対しリードしたい考え。7月から8月ごろに設立総会を行い、経団連などを通じて企業の参加を広く呼び掛けるとしている。
同協議会が現状で有望とみている量子アルゴリズムは、「量子振幅推定」や「組合せ最適化問題」などの量子確率論、「量子機械学習」や「量子化学計算」などの量子シミュレーション、量子アニーリングによる組合せ最適化、量子暗号・量子通信。
これらのアルゴリズムを正しく理解し、応用可能性について調査、検討していくとする。その他の関連技術や応用領域、人材育成、制度などについても検討課題の洗い出しを行うという。ただし、明確なロードマップは引かない。世界的な研究開発の加速で常に状況が変わるためで「いかにアジャイルに産業界が情報を共有し、作戦を考えるかが極めて重要」としている。
会長には、量子暗号通信などを研究開発する東芝の網川智会長兼社長が就任した。「量子技術は中長期の産業競争力や国家安全保障を左右する技術」とした上で「我が国は世界をリードする量子技術を多数持っている。これまで日本は『技術で勝って産業で負ける』と一部で指摘されていたが、来たる量子時代では『まずできるところから始める』というスピード感を持って産業面でも世界をリードしたい」と話した。
設立時のメンバー企業は、東芝、NTT、NEC、日立製作所、富士通、トヨタ自動車、JSR、第一生命ホールディングス、東京海上ホールディングス、三菱ケミカルホールディングス、みずほフィナンシャルグループ。
記者会見には内閣総理大臣補佐官の和泉洋人氏、内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局の赤石浩一局長も出席。国も同協議会にオブザーバーとして参加する意思を見せた。
日本国内では、量子技術に関する協議会やプログラムがすでに複数発足している。東京大学主導の「量子イノベーションイニシアティブ(QII)協議会」や、科学技術振興機構の「光・量子飛躍フラッグシッププログラム」(Q-LEAP)などだ。同日にはメルカリの研究開発組織「mercari R4D」が産学連携のコンソーシアムとして「量子インターネットタスクフォース」を立ち上げた。
東芝は、他の協議会との関係について「それぞれの役割分担を明確にして連携していきたい」とした。
【訂正履歴:2021年6月1日午後7時30分 初出時、明石浩一局長と表記していましたが、正しくは赤石浩一局長でした。おわびして訂正いたします】
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