国立天文台の研究チームは6月11日、131億年前に存在した銀河の中で吹き荒れていた巨大な“嵐”を観測したと発表した。「銀河風」(ぎんがふう)と呼ばれるこの嵐は、超巨大ブラックホールから放出されるエネルギーが星の材料である「星間ガス」を吹き飛ばしたものという。今回見つけた銀河風は観測史上最古のものであり、銀河とブラックホールの歴史を読み解くための重要な手掛かりになるとしている。
研究チームは、日本が中心となり国際プロジェクトで建設した電波望遠鏡「アルマ望遠鏡」を観測に使用した。ハワイにある「すばる望遠鏡」の超広視野カメラが捉えた、130億年以上昔の銀河のうち一つをアルマ望遠鏡で観測。その銀河内のガスの動きを調べたところ、秒速500kmの速さで移動していることが分かった。
大型の銀河の中心には、太陽の数百万倍から数百億倍の質量を持つ、超巨大なブラックホールが隠れているといわれる。銀河とブラックホールは質量が比例する関係にあるため、両者はお互いに影響を及ぼしながら進化したと考えられているという。
ブラックホールの周りで銀河風が吹いた場合、星の材料となる星間ガスが銀河の外へ押し出されるため、銀河で星が生まれにくくなる。このため、銀河の進化を調べていく上で銀河風は重要な存在という。
今回の発見で、138億年の歴史を持つ宇宙の誕生から、10億年足らずで、すでに銀河風が吹いており、その頃から互いに影響を及ぼしあって進化してきたことが示唆されるという。この研究成果は、米国の天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に2021年6月14日付で掲載される。
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