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バーチャルイベントはもはや「コロナ禍におけるやむを得ない代替案」ではないウィズコロナ時代のテクノロジー(4/4 ページ)

» 2021年07月05日 10時13分 公開
[小林啓倫ITmedia]
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「ウィズコロナ」を踏まえたバーチャルイベントの在り方

 こうした付加価値を正しく実現するためには、イベントを開催する側に、技術だけでなく「ウィズコロナ」における生活様式を理解した上での検討が求められる。

 いったいどういうことか。マーケティングコンサルタントのデニス・シャオ氏は、バーチャルイベントの戦略について解説した記事の中で、「オーディエンス(視聴者)・ファースト」の姿勢が重要であると指摘している

 例えば、在宅勤務中に仕事関係のバーチャルイベントに参加することになったとしよう。家には子供やペットがいて、ひっきりなしに音をたてたり、遊んでとせがんだりしている。仕事用に書斎を用意しているという場合でも、在宅勤務の時間内に会社から許可されたイベントに参加するのであれば、会社から貸与されているPCでログインする可能性が高い。そうなると、画面上にはメールやチャットツールが発する着信のお知らせが表示され、すぐに返答した方が良さそうなメッセージが目に留まるかもしれない。その場合には、イベント参加の方を一時中断となってしまうだろう。

 前述のように、リアルタイムで発言内容をテキスト化するといった技術を導入して、仕組み的にイベントへの関心が継続されるよう促すという対応も考えられる。ただここで提案されているのは、配信するコンテンツ側の工夫だ。リアル開催のイベントでは、普段仕事をしている場所からは物理的に離れた空間にいるため、1回のセッションで1時間以上拘束されてもさほど問題はない。

 しかし、同じ時間設定をバーチャルイベントに持ち込むのではなく、20分や30分程度に抑えた方が、視聴者の側は参加しやすいだろう。そのように、ウィズコロナにおける生活様式に対応したイベント内容を検討することが、開催側に問われているのである。

 実際に、先ほど紹介したLinkedInの調査(EMEA地域のイベント開催企業を対象としたアンケート)において、もう1つ興味深い結果が出ている。回答者の78%が、「『イベントの成功』とは何を意味するのかについて再検討した」と答え、さらに79%が「バーチャルイベントの目標を達成するために、スキルアップを計画している」と答えているのだ。バーチャルイベントならではの開催スタイル、提供する価値、そして「成功」の位置付けを考え、それを実現するために、多くの企業が活動を始めているといえるだろう。

 世界最大の家電見本市であるCESは、2021年はパンデミックの影響でオンライン開催となったものの、米国での感染状況の改善を受け、2022年度は物理的な展示を復活させるとしている。もちろん従来型のイベントにも独自の価値があり、新型コロナウイルスの恐れが低下すれば、リアル回帰の流れも生まれてくるだろう。

 しかしバーチャルイベントならではの価値が認識され、さらに新たな付加価値が模索されている現在、「コロナが収まったからリアルで開催」と単純に結論を出すことはできない。デジタルとアナログ、それぞれの長所をどう組み合わせるかという問いが提示されているのである。

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