ITmedia NEWS > 科学・テクノロジー >
ニュース
» 2021年08月10日 12時18分 公開

人間が“鼻輪ウェアラブル”装着 臭いの方向を検知しガス漏れの場所を特定Innovative Tech

見た目はカッコ悪いが、人間の嗅覚を大幅に向上させるデバイスだ。

[山下裕毅,ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 米シカゴ大学の研究チームが開発した「Stereo-Smell via Electrical Trigeminal Stimulation」は、鼻に装着するウェアラブルデバイス。鼻中隔を電気的に刺激し、その奥にある三叉神経へ感覚を生み出す方法で発生源(ガス漏れの場所)の臭いの強度と方向を検知する。

photo 鼻に装着するウェアラブルデバイスで電気刺激を与え、発生源の強度と方向を検知する

 臭いを知覚させる方法としては、前頭葉の下にある嗅覚処理を司(つかさど)る脳領域「嗅球」に電気刺激を与える手法がある。しかし、嗅球に電極を装着するため侵襲性のリスクが高く、臭いの生成にも不安定さが目立つ。

 今回は嗅球ではなく、顔面の触覚(鼻の中の感覚も含む)を脳に伝達する「三叉神経」に着目した。鼻腔内に神経の末端部分を持つ三叉神経は、単体ではなく嗅球と連携して、入ってきた臭いの温かさ、新鮮さ、渋さなどを感知する。三叉神経を選んだのは、嗅球では簡単にできないステレオ嗅覚、つまり鼻孔ごとの違いを簡単に感じられるからという

 今回は、この三叉神経と嗅球の感覚を融合させ、鼻中隔を電気的に刺激することで臭いやガスセンサーの危険信号を提供するデバイスを提案する。

 デバイスのサイズは10×23mm。バッテリー、センサー、無線装置、刺激装置、電極などで構成する。鼻腔内に電極を挿入しなければならない他の装置とは異なり、今回のデバイスはユーザーの鼻の中に中隔をまたいで鼻輪のように設置する、装着者への負担が少ない設計だ。

photo 2枚のプリント基板で構成されており、それぞれの鼻孔に1枚ずつ装着する。両側にある小さな磁石で鼻にしっかりと固定する

 鼻中隔を電気的に刺激する機能しかないため、臭いやガスを測定するためには、外部の臭いセンサーにBluetooth接続する必要がある。外部の匂いセンサーで取得した測定値を基に、鼻中隔に与える電気刺激を決定する。

 この際に、パルス幅を変化させて、臭いの強さと方向を示すための波形パラメーターを制御する。フォトリフレクターでユーザーの吸気を検知し、入力値を決めている。

 コンピュータ制御で生成した電気刺激を利用して、本デバイスで臭いの発生源を発見できるか実験したところ、臭いの発生源の位置(ガス漏れの場所)を早期特定できることが分かった。

 本技術は嗅球ではなく三叉神経への刺激に依存しているため、嗅覚障害のある人への効果も期待できるという。臭いを使って目的地までのナビゲーションを行うなどの活用も検討している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.