ポッドキャストの収録が行われた直前には、トヨタの担当者が江島さんの東京の拠点を訪れた。問題となった車両と菓子折りを持ってきたという。謝罪と検証のためだ。ここで江島さんの私物も返却された。
鍵を再発行してもらい、そのままの状態の実車を開けてみるテストを行ったところ、今回はちゃんと動く。鍵のロック・アンロックのベリファイ(検証)を3G回線やWi-Fiで行うのではなく、Bluetoothのローカル処理だけで行っているので、本来ならば山の中であろうがちゃんと動作するはずなのだという。バッテリーの問題でもない。再検証でも原因は分からないままとなった。
原因が分からないというのはモヤモヤする状況だが、「他社の同種のサービスの場合には、コールセンターに電話するとリモートアンロックできるのだが、このサービスにはなかった」と江島さんはバックアッププランの不在を指摘する。
Bluetoothでロック・アンロックをする専用アプリの仕様も気になった。長年スマートフォンアプリの開発にも携わった江島さんの目からは基本的なUI設計がこなれてないと感じ、トラブルに遭遇するまでの間にも使っていて「誰が作ったんだ、これ!」と思っていたという。
例えば「画面の一番下にボタンがあるが、Bluetoothの接続が成功するたびにその表示が出てボタンを隠してしまう」「契約を終了するというボタンが中央にでっかく表示されて『車の外に出ていますか?』と何回も確認してくる。つまり出ていなかったらやばいということ」など、いくらでも出てくる。
江島さんは、高度な自動運転機能を持つTeslaに乗ったときは不安がなかったけれども、トヨタのこのアプリでは、その作り込みの甘さに不安を覚えたという。今回はその不安が的中してしまった。製品・サービスの出来・不出来はアプリなどの細部にも現れるという、ベテランエンジニアの勘だ。
このサービスが抱えている問題はアプリだけではないと江島さんは指摘する。結果的に彼が飛騨で放り出され、自力で帰宅せざるを得なくなった、「サポートの問題点」については後編でお届けする。
トヨタは8月7日、チョクノリ!の不具合について、全車両の点検を完了したと報告した。
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