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「メタバース×ブロックチェーン」の未来(後編) Thirdverseの國光CEOと話す、VRのその先(3/4 ページ)

» 2021年08月26日 10時19分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

メタバースが生み出す「分散」「仮説検証」社会

國光氏 ブロックチェーンの話をするとき、私がとても興味があるのが、10年、20年先の未来です。

――特にどういう部分ですか?

國光氏 decentralize(分散化)された社会体制にすごく興味があります。

 ビットコインなどの特徴として「オープンソースである」ということがありますよね。オープンソースであるということは「フォーク」(分裂)する、ということでもあります。

 フォークするというのは「別のアプローチもあるんじゃないか」ということ。その結果として、より良かったものが主軸になって残ります。

 ビットコインも、ビットコイン(BTC)とビットコイン・キャッシュ(BCH)にフォークしましたよね。BTCは「価値の保存」を重視し、BCHは「ユーティリティー」(利便性)を重視した。

 コミュニティーの中で意見が別れたとしても、そこでフォークして別々のビジョンを試していくことができます。ビジョンをそれぞれ試して、結果的に「より良かった方」が主流になっていくっていうのはすごく重要なことだと思っているんです。

 翻ってみると、現実社会、今の社会体制というのは変えにくい。

 例えば、選挙で政治を変えるとなっても、数年待たないといけないですよね。権力が巨大になってくると、変えたくても変えにくくなる。「この国が気に入らない」ということになったら、革命を起こすという話になってしまいます。

 でも、メタバースなら違いますよね。フォークして試していけばいい。

 メタバースの例としては『レディ・プレイヤー1』の「オアシス」か、『ソードアート・オンライン』が挙げられることが多いです。

 でも、この2つには共通の欠点があります。

 「オアシス」も最初の「ソードアート・オンライン」も、作った開発者はまあまあキテレツな個性の持ち主で(笑)、彼が独裁してますよね。それって、構造的にはおかしな話です。

 「オアシス」の開発者であるハリデーが、実は邪悪な人物だったとしたら、最悪じゃないですか。

photo レディ・プレイヤー1

 「オアシス」の次があるとすれば、そこをどう運営するかは試して決めていけばいい。複数にフォークしたワールドを作り、「うちは喧嘩上等」「ここは平和に」「ここは全員美少女」「ここは直接民主主義」「ここは独裁」という風に。

 ワールド内での制度も「政府運営」も、ある意味でコミュニティーが決めていく。フォークしていくことが許容される、というのはそういうことです。

 現実の世界では選挙制度1つ変えるのも大変なことです。絶望的に難しくて「なぜこれができないの?」ということもある。

 まずはバーチャルな世界で実験すればいいんですよ。

 「この制度、実際にやったらどうなるんだろう?」ということの一部でも、バーチャルでやってしまう。例えばベーシックインカムもやってみればいい。「で、その結果どうなった?」ということを見ていける。「やっぱり誰も働かねーなあ」となったらやめればいいし、そうでない可能性もある。

 実験の結果ワークするものをリアルでも実施する、という世界になってくると、面白いと思うんです。

――すなわち、リアルをアップデートするためのフォークできるメタバース。

國光氏 重要なのは「仮説検証」ですよね。これをいかに早く回せるのか。

 僕らの社会の制度は、PDCA(Plan、Do、Check、Action)がすさまじく回しにくい。でも、バーチャルの世界で制度をフォークを繰り返してPDCAをどんどん回す感じになってくると、より「仮説検証ができる社会制度」が作れるようになってくるんじゃないかな、と思うんです。

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