机の上にあるのは、ノートPCと小型のモニターを組み合わせて作った箱のようなディスプレイ。ディスプレイには3Dキャラクターの踊る様子が映し出されているが、見る角度を変えるとまるで本当に机の上で踊っているかのよう。こんな様子を収めた動画がTwitterで話題になっている。
「箱の中に人がいるみたい」「どういう仕組みか全く分からない」といった反響もあり、8月27日午後7時時点で約2万5000いいねを集めている。
これを開発したのはフリーランスエンジニアのROBAさん(@vjroba)。この仕組みを他のさまざまなディスプレイやプロジェクターでも再現するためのソフトウェア「Portalgraph」を製作したという。
どんな仕組みで立体的な映像を作っているのか、ROBAさんに話を聞いた。
本来このソフトを使う際には、実際にその場で映像を見る人が台湾HTCの位置トラッキングデバイス「Viveトラッカー」を頭に装着する。トラッカーで取得した頭の位置とモニターやプロジェクターの位置関係に応じて、モニターに映像を出力。冒頭の動画では、カメラにトラッカーを装着し、カメラの位置に合わせて映像を変えている。
実際に見る際には3Dメガネを使うことで立体視にも対応する。アナグリフ方式(いわゆる赤青メガネ)や液晶シャッター方式(センサーが光を検知すると、一定のフレームごとに左右の目で見える映像を切り替える方式)の3Dメガネを利用者が掛け、映像側もそれに応じたコンテンツを表示することで両目による奥行き感も感じられるようになる。
3Dプロジェクターやスクリーンも含め独自のハードウェアを使う必要はなく、既製品だけで立体的に見える映像を再生できるのが特徴だ。冒頭の映像の場合、両目で立体視するには3Dメガネが必要となるが、裸眼でも片目で見れば立体感は得られるという。
ROBAさんによればPortalgraphはもともと、ソニーが開発した裸眼で映像を立体視できるディスプレイ「ELF-SR1」を見たときに「もっと安く、もっと大きな画面で同じことができないか」と思って制作したものという。こういった開発の経緯から、Portalgraphの強みは大きなスクリーンでも映像を映せる点にあると話す。
「ELF-SR1はすごくいいが、画面が15.6インチで小さい。超単焦点のプロジェクターを買って(大きな画面で)やってみたら、これはいいぞ、となって真面目に作ってみようと思った」
既製品だけで立体的に見える映像を映せることから、設備を一式そろえる費用が比較的安い点も強みという。
「97年に東大が作った装置に『CABIN』というものがある。これはビルの中に(設置された)、外からプロジェクターで(映像を)照らすことで、正面、左右、上下の5面がスクリーンになる箱型VR空間。この装置では、1000万〜2000万もするコンピュータをスクリーン1つにつき1台使っていたらしい。(CABINと比べて)Portalgraphのために最初に買った3Dプロジェクターは4万5000円。何十、何百分の一になっている」
一方、Twitterで話題になった映像のように、ノートPCのような小さなディスプレイでもユニークな使い方ができることについてはこう感じているという。
「ELF-SR1と同じ15.6インチのディスプレイに映像を流してみたら、ELF-SR1と近い体験になった。当初はPortalgraphのことを『貧乏ELF(エルフ)ちゃん』と呼んでいたが、一周回って戻ってきた」
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