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空に浮かぶ巨大原稿 “VR展覧会”でみた可能性と課題 マンガで解説サダタローの「ニュースゆる知り!」(3/3 ページ)

» 2021年08月30日 08時00分 公開
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展示方法はVRならでは

 VRデビルマン展では、リアルの展覧会ではできないような工夫がいくつか施されていました。展示物が空に浮いていたりするのはもちろんですが、炎に包まれた会場や、浮島でできた会場など、コーナーのテーマに合わせた自由な空間づくりが目を引きます。遠くにある作品はユーザー操作で手前に引き寄せて鑑賞することも可能。

 リアルの展覧会では会場による空間の制約があり、作品も原則触れず一定より近くには寄れないことを考えると、VRは展示側の意図を最大限反映させた会場づくりができるといえそうです。

スマホVR非対応がボトルネックか

 VRイベントの最大のボトルネックは「VRを体験するデバイスの普及」といっても過言ではないのではないでしょうか。

 今回のVRデビルマン展は2Dで閲覧できるデスクトップ版と、VIVEやOculus RiftといったPC向けVR HMD対応アプリを用意していましたが、サダタロー氏も感じていたようにデスクトップ版はVR空間を十全に堪能できるとはいえず、PC向けVR環境はHMDの他にもPC側に高いグラフィックス性能(NVIDIA GeForce GTX 1060以上)が求められるため、誰もが当たり前に持っている環境とはいえません。

 例えば、スマホをVR空間へののぞき窓のように使えるクライアントアプリがあれば、より多くのユーザーにVRイベントの体験機会を提供できるかもしれません。ただ、スマホのグラフィックス性能はVR対応グラフィックスカードほどではないため、会場のポリゴン数などを制限して必要スペックを下げる、もしくはゲームストリーミングサービスのようにクラウド側で描画した映像をスマホに配信する、などの工夫は必要になりそうですが。

VRイベントが一般層に浸透する日

 VRデビルマン展を主催したVRデビルマン展実行委員会(東映エージェンシーとソニー・ミュージックソリューションズ)は、今回の展覧会について「(コロナからの)一時的な回避という位置付けではなく、長期的な視点で新しいエンタメを模索する意図があった」と開催の経緯を説明します。

 次に向けての課題も認識しているといいます。「VR体験は実際にやってみないとその価値や楽しさが伝わらないため、その良さを広めていくのは容易ではない」とした上で「VRならではの体験の素晴らしさを、スマホやPCに向けて最適化していくことが課題であり、アクセスの間口を広げることで、より身近で体験価値の高いものを提供できるようにしたい」と取材に対しコメントしました。

 2019年にはスタンドアロンVRデバイス「Oculus Quest」が、2020年10月には「Oculus Quest 2」が発売されるなど、頭の動きとVR空間の視点がシンクロするVRデバイスは以前よりも手が届きやすい存在になってきています。特にQuest 2の販売台数は21年3月までに「Oculusシリーズの全てのモデルの合計を上回った」とFacebookのVR/AR部門のバイスプレジデントであるアンドリュー・ボスワース氏が明かしており、VRユーザーの増加を示唆しています。

 具体的な販売台数は明らかにしていないものの、米調査会社SuperDataは2020年第4四半期までにQuest 2の販売台数が全世界で100万台を超えたと推計しています。

 全世界で100万台ということは日本での販売台数は多くても数十万台程度ということでもあり、やはり誰でもVR環境を持っているというには程遠い状況です。しかし、ユーザー数の増加による市場の拡大と、VRコンテンツの数・質の向上が良いサイクルで回っていくと、アーリーアダプター層を越えてマジョリティ層まで届くタイミングが来るのかもしれません。

 その意味では、“他者との交流など実社会に近いレベルの自由な活動ができる仮想空間”とされる「メタバース」の概念はVRの普及を後押しする可能性がありますし、Facebookは8月19日にメタバースのバーチャル会議室「Horizon Workrooms」を一般公開するなど、メタバース展開に力を入れてきています。

 スマホ対応のように間口を広げる戦略と、メタバースのようにVRならではの体験を深化させる戦略の2軸を進めることがVR普及の近道になりそうです。

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