始まりは社長判断だった。「2020年1月に新型コロナのニュースが入ってきたとき、これはマズイと、社長がリーダーとなってマスク製造の組織作りが始まりました」とミネベアミツミの石川尊之氏(広報・IR室次長)は話す。
石川氏は2003年のSARSの流行当時に中国支社にいて感染症対策を経験していた。新型コロナのニュースを聞いても、SARSのときほどのことはないだろうと思いながらも対策を徹底。SARS以来、備蓄していたマスクを各国の工場に配って、マスクの着用を徹底した。
ミネベアミツミの製品は医療現場でも多く使われているため、医療が逼迫するであろう事態に向けて、工場が止まる事態は避けたかった。マスクの備蓄は多すぎるくらいあったので、国内のマスク不足にも影響を受けずに済んだ。
とはいえ、マスクの備蓄は無尽蔵ではないので、徐々に足りなくなってくる。そこでまず、社員とその家族に配る分だけでも自社で製造しようということになった。初動が早かったこともあって、2020年4月には生産を開始、5月には生産量も安定し、10万人の社員に配る以上の生産が可能になった。つまり、もともとは自社の社員を守るために作ったマスクなのだ。
それを可能にしたのは、精密機器メーカーならではの、ハイスペックなクリーンルームを持っていたということが大きかったという。
「スマホやPC、医療機器向けの部品やボールベアリングなど、精密さが要求される現場ですから、クリーンルームもレベルが違うのです。マスク以上にホコリやチリなどの影響を受けやすい部品を作っているわけですから」と石川氏。
これにミネベアミツミが長年培ってきた製造業のネットワークによる材料の調達力や、アセンブリの能力の高さが組み合わさることで、高性能なマスクの製造が可能になった。
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