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» 2021年09月06日 08時00分 公開

いまさら聞けない「メタバース」 いま仮想空間サービスが注目される“3つの理由”(2/2 ページ)

[小林啓倫,ITmedia]
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NFTによる仮想空間上での経済活動

 2つ目の理由も技術に関係したものだが、対象は仮想空間そのものではなく、その中で行われる経済活動を補完するような技術の発展だ。

 これまでも仮想空間サービス内で経済活動を行い、それを現実の世界とリンクさせる事例は存在した。例えば、ゲームで使用するアイテムや「不動産」(ゲーム空間内の一区画や構造物のデータ)を、ゲーム内で流通している通貨で売買し、それを現実の通貨に換金するといった具合だ。それは多くの人々を引き付けてきたが、従来よりも高度な経済活動が定着する可能性が現れてきている。

 21年4月、「Everydays - The First 5000 Days」と名付けられたデジタルアート、つまり物理的な実体を持たない芸術作品が、約6935万ドル(約75億円)で落札されたことが報じられた。しかし人々が関心を寄せたのはその額だけでなく、NFTの技術が活用されていた点だった。

日本円にして約75億円で落札されたデジタルアート「Everydays」(クリスティーズのWebサイトより)

 NFTとは「非代替性トークン(non-fungible token)」の略で、ブロックチェーン上に構築されるデジタルデータの一種だ。ブロックチェーン技術が活用されているため、暗号通貨と同様、その真贋や所有、譲渡に関する記録を改ざんすることが非常に難しい。これまでデジタルデータは簡単にコピーされたり、取引のログを改ざんされてしまったりする恐れが大きかったが、NFTを活用することで、唯一性を確保しながら安全に所有、売買できる。そこで、こうした巨額の取引が行われるようになってきたというわけだ。

 当然ながら、それは仮想空間内のデジタルアイテムについても言うことができ、メタバースとNFTが組み合わされることで、より多様で大規模な経済活動が仮想空間上で行われるようになると期待されている。ちなみに前述の「Everydays」も、今後さまざまなメタバース・サービス内での公開が検討されているそうだ。

コロナ禍により生じた「メタバース・バブル」

 3つ目の理由は、仮想空間サービス自体ではなく、それを取り巻く環境の変化である。COVID-19の影響で、現実空間で人々が集まるイベントは、軒並み中止や厳しい制限を付けた上での開催に追い込まれている。そんな中、現実に近いイベントをバーチャルで開催可能な空間として、メタバースが期待されているのだ。

 メタバースを展開するプラットフォーム企業も、そうしたニーズに応えるようになっており、例えば「あつまれ どうぶつの森」でも、さまざまな企業や公的機関とのコラボレーション活動が実現している。またメタバース自体も、ゲームなど従来の用途以外にも使えるように機能面での進化が進んでおり、FacebookのHorizon Workroomsもその一つといえるだろう。

「あつまれ どうぶつの森」でJTBが作成したJTB島

 またNFTによって、仮想空間内の取引が安全なものになれば、さらに多様な用途でメタバースが使えるようになる。バーチャルイベントの開催者を対象としたアンケートでは、バーチャルイベントは「リアルイベントの代わり」の位置付けを超えて定着する可能性を示すという調査結果もある。その受け皿としてのメタバースへの注目がますます高まると考えられる。

 こうした理由が中心となって、仮想空間サービスはメタバースの名前で再び注目を集めている。関連技術の進化や、新たな経済活動の模索、そして「ウィズコロナ」の新たな生活様式の模索はしばらく続きそうであり、企業によるメタバースへの積極的な投資も当面維持されるだろう。

 一方、今後の発展に向けて乗り越えるべき点もある。さらなる市場拡大をもたらすような新しいコンテンツが生み出されるかどうか、また大勢の人々が参加する際には欠かせない、包括的なルールの形成が進むかどうかは未知数だ。相次ぐ大企業の参入も、前述のNFTをベースとした経済活動への期待と相まって、一種のバブル状態を生み出しているという批判もある。

 メタバース・バブルがかつてのセカンドライフブームと同じ運命をたどるのか、あるいは多くのSF作品が夢見てきた、全人類が参加するような巨大プラットフォームを実現するのか。いずれにしても、大きな変化の局面を私たちは目にしているといえるだろう。

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