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“鼻と口の呼吸”でハンズフリー入力 温度で識別し多様なコマンド 東大が「DualBreath」開発Innovative Tech

» 2021年09月13日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 東京大学 篠田・牧野 研究室が開発した「DualBreath: Input Method Using Nasal and Mouth Breathing」は、鼻呼吸と口呼吸で操作するハンズフリーのユーザーインタフェースだ。鼻で短く吸ったり、口で長く吐いたりといった変則的な呼吸を鼻と口付近の温度で検出し、コマンドに変換する。

photo システムの概念図。2つのスイッチをオン/オフするコマンドを送る

 車の運転中や料理をしている際は手が離せないのでハンズフリーの入力が活躍する。現状では音声や視線を利用した方法が多いが、今回は鼻と口の2種類の呼吸を利用する手法を開発した。

 人間は何もしていなければ一定のリズムで呼吸するため、短く吐く、長く吸うなどの変則的な呼吸は意図したものとなる。そこで、呼吸リズムの意図的なタイミングのズレを入力コマンドとして利用した。

 呼吸のリズムは、鼻と口付近の温度を赤外線カメラで計測し、どちらで吸ったか吐いたかを検出する。息を吸うと空気の流れによって鼻と口付近の温度が下がり、息を吐く場合は体内で暖めた気体を排出するため温度が上昇する。

photo 赤外線カメラで鼻と口の周囲の温度を取得する。鼻で短く吐くとスイッチAがオンになるデモンストレーション

 このような温度の違いから、8つのコマンド(鼻/口、短く/長く、吐く/吸うの組み合わせ)に分類。実験ではこの方法を使って、スイッチのオン/オフ、連続的にスライド、ドラッグ&ドロップといった操作に成功した。

photo 口で長く吐いてパラメーターをスライドさせているデモンストレーション

 この手法は、既存の視線や音声といった入力方法と組み合わせることも可能だ。例えば、視線によって2次元のポインティングを行い、この手法によって左右のクリックや上下のスクロール操作を併用すれば、手を使わずにGUI(Graphical User Interface)操作が行える。

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