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テンキーで超簡単に弾けるギターっぽい楽器「インスタコード」 「僕にも弾けた」系ガジェットへの挑戦は続く分かりにくいけれど面白いモノたち(3/5 ページ)

» 2021年09月30日 11時13分 公開
[納富廉邦ITmedia]

コード進行をテンキーで操作

 そのコードをテンキーに置き換える操作方法の基本になるのが、コード進行のパターンを説明するときに使うギリシャ数字による表記だ。例えば、多くの名曲で使われていることでも有名な、「パッヘルベルのカノン」から名前を取った「カノン進行」と呼ばれるコード進行のパターンがある。これは、通常、

I→V→VIm→IIIm→IV→I→IV→V

と表記される。

 Iをルート(基音)とした時に、その5度上のメジャー(長和音)、6度上のマイナー(短和音)、3度上のマイナー、といった、和音における音階を表わしていて、例えばこれをルート、つまり「I」に相当するコードをCにした場合は、

C→G→Am→Em→F→C→F→G

となる。マイナーはmが付き、メジャーは省略される。同様に、ルートをGにすると

G→D→Em→Bm→C→G→C→D

となる。ルートがどの音でも、コード自体の動きは変わらないので、その動きを数字で表わしているわけだ。

 これをテンキーに対応させたのがインスタコード。だから、カノン進行の曲を弾くなら、まずルートになるコード(いわゆる「キー」)を設定して、後は、

1→5→6→3→4→1→4→5

と押さえればカノン進行の曲が弾ける。

 本当に、指一本でコードを押さえられるわけだ。

 うまいのは、2と3と6と7のキーが、あらかじめマイナーに設定されているところ。8は2のキーの半音上、9は6の半音上に設定されている。だから、とにかく、数字の順番通りテンキーを押さえながら、もう一方の手で、弦をかき鳴らすようにパッドをジャラーンと弾けば、カノン進行のような、良く使われるコード進行の曲の弾き語りはすぐにできてしまう。

 カノン進行をちょっと変えた、例えばビートルズの「Let It Be」のような曲でも、コード進行がC→G→Am→Fだから、

1→5→6→4

でOKだ。

photo キーをC/Amに設定した時の、画面はこんな風に、テンキーとコードが対応する。テンキーの周囲にあるボタンで複雑なコードも演奏できる仕掛け

 フランキー・ヴァリやボーイズ・タウン・ギャングの「君の瞳に恋してる」やスピッツ「ロビンソン」など多くの曲のサビに使われている、いわゆる王道進行

IV→V→IIIm→VIm

にしても、インスタコードなら

4→5→3→6

でOK。

 BiSHの「スパーク」のAメロを例に、このテンキーの設定が、いかにうまくできているかを見てみよう。

 この曲の場合、

F→Am→Gm→Bbm

と、初心者にはギターではちょっと難しいコード進行だ。カポ(ギターで移調に使うカポタスト)を付けても、難易度はあまり変わらない。

 進行のパターンは、

I→IIIm→IIm→IVm

だから、これをインスタコードに置き換えると、

1→3→2→4+〜

となる。

 最後に4のキーをマイナーコードにするために、キーを2つ押すパターンが登場するけれど、これ、実際に弾いてみると、ここがマイナーになってなくても、弾き語りにはあんまり問題ないことが分かる。

 もちろん、マイナーキーを押した方がちょっとカッコ良くはなる。2つ押さえられるようになったら押さえれば良い。コードって案外、そういうものなのだ。しかも、この曲、IVmは、Aメロにしか出てこない。サビでは、

IV→V→VIm→IIIm→IIm→V→I

と、iVはメジャーになるので、インスタコード上では、

4→5→6→3→2→5→1

と、また、キー1つだけで済むのだ。

 キーの2と3と6と7がマイナーに設定されている便利さが分かってもらえただろうか。要するに、コード進行では、ルートから2度上と3度上と6度上と7度上のコードはマイナーになることが多いということなのだ。

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