第1回目の緊急事態宣言が発出される少し前の2020年3月末、『活動の場を奪われたミュージシャンが体感する、ライブ配信と投げ銭の手応え 新型コロナ「自粛」に挑む』と題した記事で、日々、ライブハウスやホールなどで地道にライブ活動を行っているアーティストのコロナ危機対応について報告した。
この取材に応じてくれた「バンドネオン」奏者の仁詩(ひとし)さんは、その後、驚くような勢いでライブ配信の達人に成長した。今では、自身や仲間の演奏を配信する以外にも、頼りになる助っ人としてプロの配信業務に携わり、企業、官公庁、医療系などの配信現場で活躍するまでに変貌を遂げた。
仁詩さんと筆者は、数年前からCD制作等でお付き合いがある。ライブ演奏の機会を奪われた1人のアーティストが、ダイナミックケイパビリティ(自己変革能力)を発揮し、コロナ禍をたくましく生きる姿を目の当たりにした気分だ。いうなれば、ミュージシャンのDX(デジタルトランスフォーメーション)を見るようだ。仁詩さんのその後を紹介しよう(以下、コメントは全て仁詩さん)。
記事を公開した当時は、ネット回線のない会場で、寄せ集めの機材を活用し、スマホのテザリングを利用して配信していたという。確かに、画像が時々途切れたり、進行が円滑でないなど、視聴者から見ても、手探り状態ではあったことが懐かしい。しかし、この配信で手応えをつかみ、「ライブ配信に魅力と可能性を感じた」という。
ただ、第1回目の緊急事態宣言が出た際、「ミュージシャンのなかには心が折れちゃった人もいて、活動休止状態に入る仲間も多かった。ならば自分1人でも配信を続けていこうと決心し、最低限の機材を購入して、自宅から1人で配信できる環境を構築した」そうだ。
配信は、YouTubeを通じて毎週日曜日に行われ、当時は1カメの固定画面と、音声はコンデンサーマイク1本、ダイナミックマイク1本というシンプルなセッティングでスタート。絵面も、本棚の前といういかにも手作り感満載の配信だった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR