千葉大学は10月13日、同大の中島誠也助教(大学院薬学研究院)と根本哲宏教授(同)が、ヨウ素を含む化合物について、化合物内の原子同士が結び付く力である「結合エネルギー」の強さを高速に算出するAIを構築したと発表した。従来の手法に比べて約1.3億倍の速さで結合エネルギーを算出できる他、計算マシンは一般的なPCで十分という。学習データを増やせば他の物質への応用も期待できるとしている。
従来の結合エネルギー計算には、分子が最も安定する構造をコンピュータで算出した上で、その分子構造から数値を導き出す「DFT計算」という手法を使っていたという。しかしDFT計算では分子1つの結合エネルギーを算出するのに数時間から数日が必要になる他、高性能なコンピュータやソフトウェアと、計算に関する専門知識が必要だった。
そこで中島助教らは、結合力が弱く多彩な化学反応を起こす「超原子価ヨウ素」を含む化合物に注目してAIを構築。DFT計算で算出した超原子価ヨウ素約700種の結合エネルギーの数値データを活用し、データセットの75%を各分子の構造名とセットにしてAIに機械学習させ、複数の予測モデルを構築。残り25%で予測精度を検証した。
最後に、これまでの手順で比較的高い精度を示した予測モデル16個を使って、当初用意した700種とは別の超原子価ヨウ素561種の結合エネルギーを、1コアのCPUを搭載するPCで算出したところ、DFT計算では4272日かかる計算を2.9秒で完了できたという。
今回の研究は、英Nature Portfolioの科学学術誌「Scientific Reports」に10月12日付で掲載された。
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