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オリジナルデザインのウイスキーを妻に贈る 結婚の歳月を刻むラベル、どのフォントで表現するかデジタルネイティブのためのフォントとデザイン(2/5 ページ)

» 2021年10月29日 20時03分 公開
[菊池美範ITmedia]

 この方向でデザインを詰めようというキーポイントになったのは、結婚生活で大切な家族であった2匹の愛犬、トリスタンとみぃ。ボトリング前に天へ旅立ってしまったこともあり、結婚10周年にふさわしいメインビジュアルはやはりこれしかない、という結論になった。ただし、もともとウイスキーのラベル用として撮った写真はなく、2匹がバランスよく並んだものもない。そこで、過去に撮影された写真からトリスタンとみぃのそれぞれを切り抜いてレタッチし、合成した。

photo ラベルのビジュアルに使用されたイラストの元となった「トリスタン」の写真
photo こちらもイラストの元となった「みぃ」の写真

 それだけではウイスキーラベルのメインビジュアルとしては弱いので、Photoshopを使用してイラスト風に加工を続けた。

 トーンを整理したり、ポーズや尻尾の位置を変更するなどして愛犬のかわいさは出てきたものの、ラベルに使用したときのアイコン感がまだ物足りない。最終的にそれらしくなってきたのは、写真をコミカライズするiOS用のアプリケーションで仕上げてみてから。ようやくラベルのメインビジュアルに使用できるイラストが完成した。

 加工の最終ツールがPhotoshopではなく、スマートフォンのアプリケーションが最適だったというデザイナーの言葉には、ああ、時代は変わったんだなあと感慨深いものがある。

photo 加工されてアイコン化したイラスト。ウイスキーボトルとしてバーカウンターや自宅の棚に並べたときに個性が明確に表現され、デザインのテーマが2匹の犬であることが遠目からも分かるように、イラストアイコンとして仕上げた。奥がトリスタン(雄)、手前がみぃ(雌)。トリスタンは享年15歳、みぃは保護犬だったので享年は推定16歳

 ラベルに使用したフォントは「CHICHIBU」の文字にDIN Condensedを、「Single Malt Japanese Whisky」の表記にはあえてTimes Boldを使用した。私も他のデザイナーも普段はパッケージデザインに使わない書体なのだが、白地を活かしたラベルの力強さを出すのにはこの2書体を中心に使うことにした。ボトルの製造年と熟成年数の表記にはTimes Regularを使用。これでデザインの骨格は、ほぼ確定した。

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