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「都市連動型メタバース」で解決すべき法的課題とは? KDDIらがバーチャルシティ向けコンソーシアム設立(2/2 ページ)

» 2021年11月10日 20時00分 公開
[石井徹ITmedia]
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「メタバースの土地」に現実の法制度を類推適用するには限界がある

 それでは、メタバースの法的課題とはどのようなものが考えられるのだろうか。コンソーシアムに有識者として参加する道下剣志郎弁護士は、まずはメタバースの参加者の権利が必要だと指摘する。

コンソーシアムがガイドライン作成を目指す都市連動型メタバースの課題をまとめたスライド

 海外では、バーチャル空間内の土地を売買できるメタバースサービスが登場しつつある。例えば香港のメタバースゲーム「The Sandbox」は、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)を介してゲーム内の土地を売買したり、賃借できるシステムが導入されている。

 同氏はこうした事例を上げ「実際にメタバースの土地が価値を持つ世界になっているが、それらに現実の法制度を類推適用するには限界がある」と言及。現実世界における所有権や占有権のような権利保護の仕組みの整備が必要だと指摘した。

SAKURA法律事務所の道下剣志郎弁護士

 また、アバターやその所有者に対する権利についても、現状の法制度では不十分な側面もある。知的財産権の専門家としてコンソーシアムに参加する渡辺智暁氏は、「プレイヤーが作成したアバターの写真を撮られても良いか、当事者間で決められるのか」という課題を挙げた。この例では現実世界で人物を撮影する場合は、肖像権の主張ができるが、アバターの場合は作成者(プレイヤー)が著作権を有していない限り、撮影の可否を判断する権利が無いことになる。

 加えて、著作権のような法的な枠組みに実効性を持たせるためのルール作りも必要となるだろう。同氏は「まずはルールとして作れるところと、作れないところを見極め、分かりやすく整理ことが重要」と主張した。

GLOCOM 主幹研究員 教授の渡辺智暁氏

 メタバース空間上で行政サービスを提供するような仕組みを整備する場合、アバター利用者の本人確認も厳密にする必要が生じてくる。コンソーシアムでは本人確認をしたアバターと一般参加のアバターが共存できるような仕組みも検討するとしている。

 また、将来的な課題として、複数の主体が運営するメタバース間を相互に行き来できる仕組みも求められるだろう。中馬氏は「まずは利用者のアバターが他のプラットフォームと相互に行き来できるような“アバターポータビリティ”の仕組みから整備していきたい」と言及している。

 バーチャルシティコンソーシアムには、経済産業省の商務情報政策局コンテンツ産業課もオブザーバーとして参加している。経済産業省は2021年7月に「仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業」の報告書を取りまとめるなど、メタバースが一般化した社会での法整備の課題を整理している。

経済産業省商務情報政策局コンテンツ産業課の上田泰成課長補佐

 経済産業省の上田泰成氏はこの報告書をまとめた意図について「現実社会にあるいろいろな産業がメタバース空間へ置き換えられていく中で、メタバースでの事業に参入する方にとってどのような権利上の課題があるのか、棚卸しとしてまとめたもの」と説明する。

 経済産業省では今後、メタバース上で円滑に事業活動ができるように権利保護などのための法整備の在り方を模索していくという。同氏は「国としてもメタバースのビジネスにおいてどこが勝ち筋になるのか見極めつつ、まずは安全にビジネスができるような環境を確保していきたい」と話した。

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