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バルミューダがスマホ市場に投じた「河原の小石」──「BALMUDA Phone」に勝機はあるのか(2/3 ページ)

» 2021年11月18日 18時00分 公開
[石井徹ITmedia]

こだわりは「持ちやすさ」と「アプリ」

 独創性やデザイン性で定評を持つバルミューダ。どのようなアプローチをもって、スマホ市場に一石を投じるのか。BALMUDA Phoneが追求したのは“持ちやすさ”への徹底したこだわりだ。

 BALMUDA Phoneでは寺尾社長自らがおよそ10年ぶりのチーフデザイナーとして開発に参加。社長自らペンを取り、プロポーションを描き出していった。「河原の小石」をモチーフとした丸っこいフォルムで構成されたスマホは、寺尾氏の表現を借りれば「曲線だけで構成された、唯一のスマートフォン」だ。

 手に持ちやすい形状を試行錯誤した結果、BALMUDA Phoneのディスプレイはトレンドに逆行する4.9インチを採用。ディスプレイも長方形ではなくややカーブをつけており、機械的ではないかたちを目指した。かつてのiPhone 3Gを思わせる古めかしいデザインにも見えてしまうが、現代の薄型スマホの多くが忘れてしまった“ホールド感”へのこだわりを感じさせる。

 スマホは今や、世界中の人々にとって欠かせない生活ツールとなった。高速な4G/5G通信が普及し、高画質な映像配信が楽しめるようになると、そのスマホのトレンドは必然的に大画面化の傾向に流れている。BALMUDA Phoneはそのトレンドに反するように、4.9インチで9:16という小型ディスプレイを採用している。

「BALMUDA Phone」と他社のスマートフォンを比較。縦は短いものの横幅はそれなりに大きい

 背面素材では、樹脂成形でざらざらとした手触りを演出。さらに、特殊な塗装を施すことで、革製品や木工品のような「使えば使うほど、味わい深くなる」という仕上げを施した。質感にも河原の小石がモチーフとして取り入れられている。

「BALMUDA Phone」の背面。ザラザラした質感だ

 スペックは決して最先端、最高峰とはいえないが、Qualcommのミドルハイプロセッサ「Snapdragon 765」を採用し、メモリは約6GBと、普段使いでは十分な性能を確保している。防水性能は生活防水のIPX4相当だが、おサイフケータイや指紋認証にも対応している

 寺尾社長のもう1つのこだわりがバルミューダ独自のアプリだ。寺尾氏は「アプリケーションの開発の深さ、可能性を感じた。同じスマホでも1つのいいアプリケーションを作ると大きく変わる」と語り、独自アプリの使い勝手の重要性を強調した。

 BALMUDA Phone専用のアプリを多くそろえている。特に実用的なアプリにフォーカスを当てており、発売時は「スケジューラー」「メモ」「時計」「電卓」、そして「ホーム」が独自のアプリとして搭載される。アプリにはユニークなアイデアを取り入れているという。スケジューラーは、Google カレンダーとも同期できるカレンダーアプリだが、ピンチイン・アウトの操作で一日単位の予定表示から年単位の予定表示までスムーズに切り替えられる。

オリジナルのカレンダーアプリ

 ホーム画面には自分の名前などの好みの文字列を入れてカスタマイズできる。2本の斜め線がアクセントとなっており、この線をなぞる操作で、指定したアプリを素早く起動できる。ホームアプリやToolsのデザインは、ユーザーの好みにあわせてある程度カスタマイズできるようになっている。

「トースターとはつながらない」

 家電のバルミューダが新規参入ということで、期待されるのは「スマート家電との連携」だろう。今後、バルミューダがスマート家電を発売し、スマホと連携するようになる可能性だ。

バルミューダの家電。現時点ではスマート家電との連携はなさそうだ

 この方向性について、寺尾氏は「BALMUDA PhoneとわれわれのThe TorstarやThe GreenFanのような家電は連携しません。つながりません」と明確に否定している。バルミューダの生活家電は、スタイリッシュな設計とシンプルな操作性が売りなだけに、スマホで動かせるようにするメリットは大きくないという見解だ。

 実はバルミューダでは、2013年に加湿器やヒーターをスマホから操作できるようにする仕組みを実装した過去がある。その時の体験を寺尾氏は「帰宅前にスマホでボタンを押すことと、家に帰ってボタンを押すことに、手間や快適さで違いを感じなかった」と振り返っている。

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