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「2画面スマホ」はスマートフォンの未来か 「Surface Duo 2」海外モデルを取り寄せて検証してみたデジタル・イエスタデイワンスモア計画(3/3 ページ)

» 2021年11月30日 18時34分 公開
[甲斐祐樹ITmedia]
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2画面スマートフォンに見る「未来のスマホ像」

 前回の記事では、2画面スマートフォンの過去から現在までを振り返った。その後編である今回は、これをベースにしながら、スマートフォンの未来について考えてみたい。

 前回も触れたように、iPhoneが登場して10年以上が経過したにもかかわらず、スマートフォンは「1つのディスプレイをタッチ操作する」というのが基本的な構造だった。しかしこの数年、G8X ThinQやSurface Duo 2のような2画面スマートフォン、「Galaxy Z Fold」シリーズのような折りたたみ型スマートフォンなど、ハイスペックモデルに限られるものの、今までとは違った形状が生まれつつある。

 2画面のメリットは前回も触れた通り、2つのアプリが同時に動作することで得られる自由度の高さにある。一方で本体が大きく、重くなるという形状の課題、価格が高くなるというコストの問題、片手操作が難しいという操作性の問題などもある。

 しかし、本体の大型化や重量増といった変化は、振り返ればフィーチャーフォン時代にも起きていた。当初はストレート型の端末が主流だった携帯電話だったが、ディスプレイの大画面化や高性能化に伴い、折りたたみ型の携帯電話に置き換わる。さらに「折りたたんだ状態でも着信やメールの通知を知りたい」というニーズから、背面にディスプレイを搭載する「2画面」モデルも増えていった。

 折りたたみ型が主流となることで、携帯電話は重くなり、価格も上がりはじめた。2G時代後期に登場した富士通(現FCNT)製ストレート型端末「F210i」は重量が約65gだったが、同時期の折りたたみ型端末「F503iS」は約97g。さらに3G時代のハイスペック折りたたみ端末「F-01A」は約142g。端末によって重量は異なるものの、ストレート型から比べれば2倍から2.5倍近い重量アップだ。

photo F503iSは約97g

 重量が1kgに達してしまうほど重くなってしまってはさすがに「携帯」するには難しいため限度はあるが、Surface Duo 2の284gという重さは、高性能との引き換えとしては妥当ではないだろうか。また、Surface Duo 2は横に広いデザインということもあり、一般的なスマートフォンサイズまで画面が小さくなればもう少し軽量化が見込めるだろう。

 1画面のハイエンドスマートフォンの重量は、米Appleの「iPhone 13 Pro」が203g、韓Samsungの「Galaxy S21 Ultra」が228gと200g超えが当たり前となりつつある。2画面スマートフォンは200から250gくらいの重量であれば、十分に受け入れられる重量になってくるのではないだろうか。

 価格面についても、フィーチャーフォンのストレート端末時代は1万円台だったが、折りたたみ型のハイスペックモデルは5万円台も珍しくなくなった。また、スマートフォンも高性能化によりハイスペックモデルは10万円超えが珍しくなくなっている。2画面スマートフォンの20万円台はさすがに高いが、普及すれば量産効果で価格帯が下がる期待もある。10万円台中盤程度なら、ハイスペックモデルとしてことさらに高い、ということもなくなるだろう。

 一方、2画面スマートフォンの本質的な課題は、片手操作が難しいという取り回しの面にある。折りたたみ型フィーチャーフォンの場合、親指を使ってはじくように片手で開くことも可能であり、そもそもキー部分しか触れないため開いたあとも片手で十分操作できた。一方で2画面スマートフォンは片手で開くのは難しいし、Surface Duo 2のような横幅の広い端末では1画面ですら片手操作が難しい。

 これもいくつかの解決方法は考えられる。1つはGalaxy Z Foldシリーズのように、折りたたんだ状態でも操作できるディスプレイを搭載してしまうこと。もしくはパナソニック製フィーチャーフォンで見られた、ボタンを押すと折りたたみ機構が開く、というようなギミックで解決する方法もあるだろう。

 G8X ThinQやSurface Duo 2の場合、中央の画面が分断される問題もあるが、これもGalaxy Z Foldシリーズのような折りたたみディスプレイを採用した2画面であれば解決できる。また、NECカシオモバイルコミュニケーションズが2013年に発表した「MEDIAS W」のように中央部分の隙間をほぼゼロにするという構造も可能だろう。

photo 「MEDIAS W」は折りたたみ方が異なるものの中央に隙間ができない構造

2画面で新たな価値を生み出したスマートフォン

 フィーチャーフォン時代は背面に液晶を搭載した2画面モデルも存在したが、それはあくまでサブディスプレイという位置付けで、メインディスプレイに比べてできることは制限されていた。一方、2画面スマートフォンはどちらのディスプレイも同等であり、それこそがこれまでにない価値を生み出している。

 2画面スマートフォンで得られる体験はPCの操作感に近い。PCは1画面でも複数のアプリを同時に表示でき、ドラッグ&ドロップなどアプリ間連携も可能だ。仮にPCが常に1画面1アプリしか表示できないとなれば、その利便性は大きく損なわれるだろう。2画面スマートフォンからすると、今の1画面スマートフォンはその体験に近い。

 まだ歴史が浅い製品のため、認知度の低さはもちろん、技術的にこなれていない部分も多い。しかし、それらの課題は前述の通り、技術や構造で解決できることも多い。ソフトウェアもまだまだ1画面前提ではあるが、Androidの最新OS「Android 12L」では、2画面に対応した仕様が数多く取り入れているという

 2画面スマートフォン愛好家を自称して2年近くになる筆者だが、2画面は携帯電話の折りたたみ化よりも大きな利便性の向上や体験が得られると感じている。前回も指摘した通りまだまだ認知度は低いが、OSやハードウェアの機能向上で、より使いやすく万人に受け入れられる2画面スマートフォンの登場を期待したい。

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