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「国道40号ばばばばばえおうぃおい〜」 2021年の誤配信からみる教訓

» 2021年12月24日 15時30分 公開
[谷井将人ITmedia]

 2021年は、ニュースアプリや広報アカウントの“誤配信”が例年より目立った印象がある。例えば、国土交通省北海道開発局の「国道40号ばばばばばえおうぃおい〜」や、Yahoo!系アプリの「【政府発表】[配信テスト][dev]ゲリラや特殊部隊による攻撃が発生しました」などだ。

photo 国土交通省北海道開発局Twitterより(現在は削除済み)

 これらの誤配信には、笑えるものと笑えないものがある。本記事では21年に起きた誤配信の影響を振り返ることで、配信テストの教訓を探っていこう。

国土交通省北海道開発局の「国道40号ばばばばばえおうぃおい〜」

 1月19日、道路情報を伝える国土交通省北海道開発局のTwitterアカウントが「国道40号ばばばばばえおうぃおい〜べべべべべべべべべえべえええべえべべべえ(9.9km)で通行止を実施しています」という謎のツイートを投稿し、「面白い」「癒やされた」と話題になった。テスト用のテキストがサーバ更新作業中のエラーにより投稿されてしまったという。

 これが笑い話になれたのは、主に「ばばばばばえおうぃおい〜」の語感のよさだろう。

 少し細かく見てみる。このツイートが投稿されたとき、一部では国道40号が実際に渋滞しているのかを気にする人も見られたが、楽観的に言葉を面白がる人が多い印象だった。

 これは語感のよさの他にいくつかの要素が組み合わさった結果だ。「国道40号を走っていない人には関係のない情報である」「命の危険に(即座には)関係しない情報である」「明らかに何かミスが起きていると分かる」――これらがあるから笑えたといえるだろう。

アプリ版「Yahoo! JAPAN」の「阿蘇山で噴火が発生(14時59分)」

 9月9日、アプリ版「Yahoo! JAPAN」が「阿蘇山で噴火が発生(14時59分)」という内容のプッシュ通知を誤配信した。ヤフーは同日に災害情報の配信テストをしており、人為的なミスが原因という。

 阿蘇山の噴火以外にも「津波注意報が発表中(12時59分)」「地震発生 茨城県北部 最大震度5弱(19時06分)」「津波注意報が発表中(13時06分)」などさまざまな災害情報が誤配信された。

 こちらは打って変わって笑えない誤配信の一つだ。国土交通省北海道開発局の誤配信ツイートが笑えた理由に沿って考えれば、「対象地域が複数あり関係する人数が多い」「命の危険に関係する情報である」「ミスであることが一目で分からない」――完全に真逆になっているのが分かるだろう。

 誤配信しない仕組みは重要だが、何らかのミスがあったときに誤配信であることが明確に分かることも重要といえる。ミスに見えないミスは、情報発信源としての信用を落としかねない。配信元の業績に響くだけならまだいい方で、それによって命を落とすことがあれば大問題になる。

d払いの「テストです」

 12月3日、NTTドコモがスマートフォン決済サービス「d払い」で「テストです」と書かれた通知を誤配信した。結果、通知を見たユーザーからのアクセスが集中し、d払いを含む同社のサービスが一部利用しづらい状態になった。「テスト用のテキストを本番環境で誤配信してしまった」(ドコモ)という。同様の事案はモバイルPASMOでも17日に起きている。

「d払い」で障害、通知の誤配信でアクセス集中【復旧済み】

「テストです」モバイルPASMOで誤通知 アクセス集中でつながりにくい状態に

 ここまでの基準で見てみると「内容がないため影響範囲は不明」「命の危険はなさそう」「テストであることは明確」となる。本通知やニュースを見た人も「何がどうなってこの配信があったのか?」と思ったことだろう。決済アプリの不具合であれば金銭的な被害も気になるところだ。それがアクセス集中につながったのかもしれない。

 この誤配信が与える教訓は「ちょっとしたミスでサービスがダウンすることもある」ということだろう。d払いの場合、アクセス集中による障害は12月3日の午後4時54分ごろから午後6時57分ごろまで2時間続いた。誤配信は、信用問題や情報セキュリティ上の問題になるだけではないことが分かったのがこの誤配信の一つの価値といえる。

Yahoo!系アプリの「【政府発表】[配信テスト][dev]ゲリラや特殊部隊による攻撃が発生しました」

 12月22日、ヤフーが複数のアプリで「【政府発表】[配信テスト][dev]ゲリラや特殊部隊による攻撃が発生しました」という通知を誤配信した。

「ゲリラや特殊部隊による攻撃が発生しました」 Yahoo!系アプリで通知の誤配信、原因は調査中

 「影響範囲は不明」「命の危険に関係する」「テストであることは明確」であり、21年の誤配信の中では比較的冷静に捉えられるケースといえる。ITエンジニアであれば[dev]という文字列を見て「開発環境でやる作業を本番環境でやってしまったのだろう」と推測した人もいるかもしれない。

photo ヤフー系アプリで誤配信されたテスト通知

 ヤフーは誤配信についてTwitterで「正式な情報ではない」と謝罪。同社の「Yahoo!ニュース」でも、トップに誤配信に関するおわびを掲載するなど迅速な対応をしている。

誤配信の教訓

 誤配信をしない仕組みは重要だが、ミスは誰にでもあり得る以上、全てをなくすのは難しい。誤配信をする可能性も考慮してリスクヘッジを用意するのが自然ではないか。

 21年の誤配信を振り返れば、「明らかにテストであることを明示する」「重要度の低そうな内容にする」「誤配信を想定した対処マニュアルを用意する」などの対策も立てられるだろう。例えば「○○沖で地震発生。津波の可能性は調査中」よりは、「これはテスト配信です:実家の猫が子供を出産 経過は良好」などの方が、誤配信されても重大事件にはならないだろう(アクセス集中はするかもしれないが)。

 ミスを減らす工夫とは別に、過去の事例をバネに、問題を大きくしない仕組みを作るのが重要だ。

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