日本政府の共通クラウド基盤として、デジタル庁が進める「ガバメントクラウド」。各省庁や地方自治体が共通で使えるシステム基盤を整えるこの施策は、この1年間でさまざまな動きを見せた。
21年は「Amazon Web Services」(AWS)と「Google Cloud Platform」(GCP)を採択したが、2022年4月以降はこの2つのサービスを含め、これまでと同じ基準であらためて事業者を募る予定だ。つまり今後、ガバメントクラウドに新たなクラウドサービスが加わる可能性もある。
果たしてこれから、どんなサービスが日本政府が使うクラウド基盤として認められる可能性があるのか。本記事ではITmedia NEWSが掲載した記事を基に21年の動向を振り返りつつ、今後について考える。
デジタル庁はガバメントクラウドについて、同庁のWebサービスや他省庁の新システム、地方自治体のシステム基盤としての活用を検討している。
これまでばらばらだった基盤を共通化し、政府と自治体間のデータを移行しやすくしたり、クラウド化によってサーバの導入・運用コストを減らしたりすることが目的だ。複数の民間事業者がガバメントクラウド上に業務用アプリケーションなどを開発し、自治体が状況に合わせて導入を判断できるような仕組みづくりも目指すという。
地方自治体での活用については、26年3月末までに各市町村のシステム基盤をガバメントクラウドに共通化することが決定している。神戸市など8つの自治体が先行して基幹システムなどをガバメントクラウドに移行することも決まっている。8つの自治体は23年3月までに移行を済ませる予定だ。
ガバメントクラウドが最初に話題を集めたのは、デジタル庁が10月にAWSとGCPを採択したときだろう。
デジタル庁は政府のセキュリティ評価制度「ISMAP」のリストに登録されたパブリッククラウドであることや、その上でセキュリティ対策や業務継続性など約350項目の基準を満たすことを条件に公募を実施した。
公募には3社が応札。デジタル庁はこのうち、基準を実際に満たしていたAWSとGCPを選定した。残り1社についての詳細は明かしていない。
この発表に対し、ネット上では「なぜ国産クラウドではないのか」「日本の産業を育成する気はないのか」などと、海外のサービスを選んだデジタル庁の方針を疑問視する声が続出。匿名掲示板「2ちゃんねる」の開設者・西村博之(ひろゆき)さんも「自分ならさくらインターネットやGMOなど日本の事業者のクラウドを標準にする」とABEMA TVの報道番組で発言した。
一方、クラウド基盤「さくらのクラウド」を提供するさくらインターネットの田中邦裕社長は、ITmedia NEWSの取材に対し「日本のベンダーはまだまだ。われわれが今後信頼性を高めていかなくていけない」とコメント。日本のベンダーが、海外ベンダーに対抗できる力量を備えていない現状を指摘した。
さらに日本の事業者が参入できるよう基準を変えるのは得策ではなく、海外の事業者に対抗できるベンダーが育つ必要があるとの見方を示した他、さくらのクラウドについてガバメントクラウド入りを目指していることも明かした。
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