GCPを活用しての開発が決まったヤフーのAI。19年10月から12月にかけて伊藤さんが1人でプロトタイプを開発し、社内のAI専門チームの協力を受けて再度チューニングした後、20年1月に運用をスタートした。
既存の審査システムも従来通り稼働し、ここでOKと判定した広告コンテンツをGCP上のAIモデルに送信。AIは学習したデータを基に、広告のテキストをあらためて審査する。AIがNGと判定したものはさらに人手でチェックする仕組みだ。
「これまでは既存システムがNGとしたものを全て人手で審査していたが、AIがNG判定したものだけを人手のチェックに回せるようになり、審査作業の工数を減らせた。精度は既存システム以上で、かなりの数の広告をAIモデルでNG判定している」(一条さん)
専門人材がいなくても運用できるシステムを目指したことで、機械学習やデータ分析の専門家だけでなく、広告審査の担当者もAIモデルの調整に携われるメリットもあった。ヤフーは今も継続的にAIモデルをアップデートしており、広告審査の企画担当者が自分でBig QueryやCloud AutoMLを直接触ってAIをチューニングすることもあるという。
「広告審査については、当然ながら広告審査の担当者が一番詳しい。ビジネスユーザーでもデータ分析やAI学習の作業が行えるような環境が不可欠だった」(一条さん)
AIを活用し、広告審査の効率化を実現したヤフー。浮いた人手を学習データの分析やブラッシュアップに回せるようになったことから、今後はAIをチューニングする作業の自動化・省力化にリソースを回す方針だ。
改良した機械学習モデルを次々とリリースする態勢を作る「MLOps」も目指す。Googleの機械学習プラットフォーム「Vertex AI」などを活用しながら、効率よくAIを運用できる仕組みを整えたいという。
「現在の仕組みをどんどん改良し、AIモデルのアップデートから評価までのプロセスを全て自動化したい。早くて1年後にはある程度の自動化を達成できればと考えている」(伊藤さん)
「年1万時間の業務削減」自社AIで成し遂げたオープンハウス カギは住宅チラシの自動作成 キーパーソンに聞く舞台裏
月3000枚の墓石写真を自動で名前消し “AIに無関心”だった元石材屋の社員がエンジニアと業務AIを作るまでの一部始終
音ゲーの“譜面”作りをAIで高速化 KLabが「スクスタ」で活用、所要時間を半分に
まるで“SIer版ヤシマ作戦” 「エヴァ」公式アプリを配信基盤含め1カ月で開発 エンジニア2人の失敗できない挑戦記
キリン、ビールの製造計画をAIで立案 年3000時間以上を削減 まずは「ろ過計画」からCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR