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出身地ガチャが生み出すGIGAスクール格差 高校の1人1台端末導入はどうなる?小寺信良のIT大作戦(4/4 ページ)

» 2022年01月19日 11時14分 公開
[小寺信良ITmedia]
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GIGAスクール構想、もう1つの格差

 中学校で行ってきたデジタル学習を高校で止めないというアクションは、重要だ。他県に先駆けて、小中学校で数年前からフル導入している自治体では、すでに高校でも導入が進んでおり、実はあまり問題がない。そうした先進県に生まれればラッキーだが、今年の高校生から、格差が具現化することになる。すでに子供たちは「出身地ガチャ」に巻き込まれ始めているのだ。

 実はGIGAスクール構想には、もう1つの格差がある。私立校だ。私立の小中学校に対しては、端末に対する国からの補助金は公立校の半額で、修理や更新費用も学校負担となっていることから、今でも1人1台の端末配備をしていないところか、Wi-Fi設備もない小中学校が結構ある。

 私立高校もまた大変だ。都市部で私立高校といえば、高い授業料を払える裕福な家庭で生まれた成績優秀な子が通うというイメージだが、地方では全く事情が異なる。地方では授業料が安い公立校の人気が高く、優秀な子はみな公立を目指す。一方私立は実業系の学校が多く、いわゆる「滑り止め」に位置するところだ。

 これが何を意味するかというと、少子化の現在ではまず公立校から先にスロットが埋まっていき、私立は定員割れしていくということである。子供が少なければ私立校の収入は減るわけで、学校負担でインフラやクラウド整備などをやる可能性が、どんどん下がっている。端末は保護者負担かもしれないが、端末だけあっても学校にインフラがないのでは、やりようがない。

 GIGAスクール構想1期生が大学受験に進むのは、さらに3年後だ。当然そのとき大学側は、デジタルネイティブの学生を期待するだろう。だが出身地によっては、ずっと紙と鉛筆でやってきましたという学生も出てくるのではないか。

 「親ガチャに外れた」と言われれば、親としてはすまんかったというしかないが、「出身地ガチャ」は親にもどうにもならない。これまでも地域ごとに教育格差はあると言われてきたが、大学入試や就職試験は所詮ペーパー試験なので、なかったことにされてきた。だが入試や就職試験がデジタル学習者前提となれば、このGIGA格差は単純に学力の差ではなく、「そもそも知らない」「知識はあるが経験がない」といった違った形で現れるのではないだろうか。

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