クルマの各機能を集中的に操作するスクリーンのUI/UXをOTAソフトウェアアップデートで変えてしまうといった更新は、これまでの自動車メーカーの常識ではあり得ないことだと思います。ここがTeslaの先鋭的・先進的な部分であり、オーナーを魅了する部分でもあります。Teslaをして「iPhoneにタイヤをつけたようなクルマ」と表現される要因の一端ともいえます。
別件でボルボ・カー・ジャパン代表取締役社長のマーティン・パーソン氏にインタビューした際、「今後は通信によりソフトウェアをアップデートする機能が普通になっていく。クルマがiPhone化する」と明言していました。ボルボのような歴史あるメーカーも自動車をめぐる100年に一度の大変革の流れに順応しようとしています。
Teslaは今回のようなインフォテインメント系のアップデートだけでなく、バッテリーやモーターといった走行に関わる動力性能をソフトウェアアップデートで向上する取り組みも行っています。2021年型のModel S Plaidは今回のアップデートでモーターのトルクコントロールやサスペンションの制御といった部分を更新し、走行性能を向上させています。
ただ、このようなソフトウェアアップデートで動力系の性能を変更すると日本の法規制上は「改造」に該当し「型式認定」を取り直す必要があることを知りました。Model 3に性能向上のアップデートがあってもライトショーのように「ジャパンパッシング」の憂き目を見るのではないかと悲しい気持ちになりかけました。しかし、よく調べると一縷(いちる)の望みもあります。
2020年11月、道路運送車両法の一部が改正され「特定改造等許可制度」が制定されました。この新制度は、将来の自律運転時代を見据えて、車載ソフトウェアのアップデートによる車両の機能向上を容易に行えるようにするためのものです。「型式認定」の取り直しは不要で「申請」で更新が可能とあります。メーカーからすると法規制上のハードルが下がったことは確かでしょう。
マツダが、さっそくこの制度を利用して「MAZDA SPIRIT UPGRADE D1.1」という、エンジンの性能を向上させる有償のサービスを展開しています。ただし、TeslaのようなOTAでのソフトウェアアップデートではなく、ディーラーに持ち込む必要があります。価格は4万6200円(税込)+工賃です。
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