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ローランド創業50年、その黎明期を振り返る シンセ、エフェクターがアナログからデジタルへ移り変わっていった時代(4/5 ページ)

» 2022年01月30日 12時47分 公開
[小寺信良ITmedia]

音楽そのものを変えてしまったヤマハDX7

 1983年にヤマハが世界初のフルデジタルシンセ「DX7」を発売し、世界がまったく変わってしまった。その年から音楽そのものが変わってしまった。

photo ヤマハDX7

 ただFM音源の音作りは難解で、解説書も多く出たが、思い通りに音が作れた人はほとんどいなかっただろう。友人は自腹でDX7を買い込んで研究し、ある程度音が作れるようになると、DX7専門のマニピュレーターとしてスタジオに出入りするようになっていった。「音が作れる」というだけで、仕事になったのだ。

 FM音源の原理、周波数変調による音色合成技術はアナログ時代からあった。ただ、パラメーターの変化とその結果がリニアではないので、予想ができなかった。DX7は波形にシンプルなデジタルサイン波を用いたので、雑味のない金属的な音がポイントだった。これは、従来のアナログシンセでは到底出せない音だった。

 音楽CDの初めての発売は1982年で、当時アナログソースをPCM変換してデジタル録音するエンコーダーなどが発売された頃である。ただし出力はアナログのビデオテープに「録画」するという方法だった。アナログオーディオテープには周波数が高すぎて記録できなかったからだ。

 ここから数年、他社はデジタルシンセに乗り遅れた。アナログ音源で制御だけデジタル、といったモデルが多数登場したが、当時の音楽シーンが求めていたのは本物のデジタルで、もうアナログ音源の音ではなかった。

 ローランドがようやく追いつくのが1987年の「D-50」ということになる。筆者もすぐに買ったが、すでにKAWAIは1983年に「K-3」で、KORGは1984年に「DW-6000/8000」で、カシオも「CZ-101」でフルデジタル化しており、タイミングとしてはかなり遅い。

photo D-50

 翌1988年にはKORGがサンプリング音源とシーケンサーを搭載した「M1」を登場させて大ヒットするなど、80年代後半のシンセサイザーは各メーカーが「仕切り直し」で、実に面白い時代だった。

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