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時と場所を選ばない空間オーディオ制作は可能か? M1 MacとLogic ProでDolby Atmos作品を作ってみた(1/5 ページ)

» 2022年01月31日 16時18分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

 Appleの音楽制作ソフト「Logic Pro」が2021年秋のアップデートでバージョン10.7となり、「Dolby Atmos」による空間オーディオの制作環境を手に入れた。

 2万4000円というアマチュアでも導入可能なDAWが対応したことで、音楽を立体的に表現する手段が一気に身近なものになった。本稿では音楽制作者の視点で、音響空間を立体的にパッケージしリスナーに届けることができるこの次世代の音楽フォーマットについて考察したい。

 今回は、筆者がプロデュースした過去のCD音源から三線、ボーカル、アコースティックギターという3トラックの音源(沖縄民謡の「てぃんさぐぬ花」)を使っていろいろと試したので、その過程を追いながら、Dolby Atmosの基本構造やLogic Proにおける課題などについて解説する。文末には、サンプル音源のダウンロードリンクも用意した。

時と場所を選ばない空間オーディオ制作

 なんといっても、ヘッドフォンやイヤフォンでDolby Atmos Music(Dolby Atmosによる音楽コンテンツ)の制作を可能としている点が素晴らしい。筆者を含めApple MusicやAmazon Music Unlimitedで空間オーディオを楽しむ多くのユーザーは、ヘッドフォンやイヤフォンを使用するであろうからBinaural(ヘッドフォン)リスニングを前提とすることで、時と場所を選ばない手軽なコンテンツ制作を可能とした。今回のサンプル音源は終止一貫してヘッドフォンで制作した。

photo MacBook Pro 2021(14インチ、M1 Pro)とbeyerdynamic DT880などのヘッドフォンをだけでミックス作業を実施

 というか、筆者の仕事場には、Dolby Atmosをサラウンドスピーカーで再生するための設備はない。20年前に導入したDENONのDTS、ドルビーデジタル対応5.1チャンネルAVアンプとスピーカーがクローゼットの中で埃をかぶっている状態であり、当然ながら古すぎてDolby Atmosには非対応だ。HDMI端子すらない。制作業務で音楽配信を主戦場としている筆者の場合、これまでサラウンドにはまったく興味がなかった。20年前の5.1チャンネルAVアンプは、映像コンテンツの鑑賞用に導入したものだ。

 Apple MusicやAmazon Music UnlimitedがDolby Atmosフォーマットを導入し、Logic Proで制作環境も身近になったことから筆者の中で一気に音楽系のイマーシブ(没入)サウンドに対する興味が盛り上がったわけだ。

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