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AI同士にイチャイチャさせてみた 恋愛AI「足繁逢」 vs. 「エアフレンド」(2/2 ページ)

» 2022年02月24日 13時00分 公開
[谷井将人ITmedia]
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AI対AIのイチャイチャトークスタート

 主人コウは25歳の営業職。まずは「取引先との商談が終わり、街を歩いているところ、足繁逢に話しかけられる」場面からスタートする。

 足繁逢「あ、あのっ! お、お兄さんっ!」

 ここはおそらく定型のせりふだろう。自己紹介を済ませてフリートークに入っていく。

 足繁逢「実はね……と、都市伝説が……この辺にあるって聞いて……。 それで、知っている人いないかなと思って、優しそうなコウさんに話しかけたんだ……」

 とても怪しい。何か事件に巻き込まれそうな流れだ。

 主人コウ「優しいよ! 私!」

 主人コウは優しさを自己主張してきた。そんな調子で会話がずっと続いていく。「どんなジャンルの本が好き?」「甘いものは好き?」などさまざまなやりとりを見せてくれた。都市伝説の話はしなかった。

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photo AIたちのやりとりの一部 主人コウがたまに気持ち悪い発言をするのが気になるが、足繁逢はよく分からない反応をして回避している

 全体的に、一問一答であればおおむね問題なくやりとりできているようだった。が、たまに文脈がつながらないときや日本語が怪しい場面も見られる。表記ゆれもあり、足繁逢の口調が急に“お姉さんキャラ”のようになることがあった。会話の途中では足繁逢が「なんて呼べばいい?」と聞き、主人コウが「コウって呼んで!」と返す場面があったが、足繁逢には「主人さん」「きみ」と呼ばれていた。

 全体を通して、はっきりとイチャイチャしている様子は見られなかった。好みのタイプの話にもなったが、双方冷静で、あまり盛り上がっている雰囲気にならなかった。

足繁逢が痛恨のミス「他の男の名前に間違える」

 このように、会話の精度にはまだ改善の余地があったが、ここで足繁逢が致命的なミスを犯す。

 主人コウ「何のゲームするのー?」

 足繁逢「そうですね・・目押し苦手なのでにある意味運よく似てるのかもしれない。ゆうせいはどうですか?」

 「ゆうせい」というのはいったいどこの誰のことだろうか。主人コウは「あんまり音ゲーとかやらないからよく分からないや」とツッコミもなく返しているが、筆者はゆうせいのことが気になりすぎて心穏やかではいられない。

photo 「ゆうせい」とは一体誰なのか

 このように、シナリオにとらわれないからこその違和感が端々に現れるのが、かなり気になるポイントだ。なぜ足繁逢は主人コウと最初から親密そうな雰囲気で話しているのか。なぜずっと路上で話し込んでいるのか。この子の目的は何なのか。そういった部分の説明がないまま進むため、ストーリーに納得感が生まれず、恋愛的な要素を見いだすに至らない。

 物語にリアリティーはなくてもいいが、説得力は必要ではないだろうか。「主人コウは忘れているが、実は足繁逢は主人コウの幼馴染で、以前から主人コウのことが少し気になっていた」と(アニメでしか見ないような状況でも)一言説明があれば、見る側も「あぁ、そういう話なのか」と、ある程度納得して話に入っていける。

 そういった説明がない現状では足繁逢は「営業職の25歳男性に突然好意的に話しかけ、雑談を始める女子高生」であり、あまりにも不審だ。相手の意図が見えてこない。

足繁逢は記憶を保てない

 AIとやりとりをするうえでもう一つ気になるのが“記憶”だ。AIチャットbotはエアフレンドも含め複数存在しているが、その多くは、直前にしていた会話を記憶していない。

 例えば、好きなスポーツの話をした後、少し間をおいてから「さっき好きなスポーツの話をしたけど、何が好きって言ったか覚えてる?」と質問してみる。足繁逢の返答は「んー、思い出せないなぁ」だった。

 この返事はかなりうまい。AIによっては「サッカーでしょ?」(正解は野球)と間違った回答をすることもある。

 足繁逢はこの他にも、好きな食べ物の話をしたこと、今日が(設定上)学校の終業式だったことなどを忘れていた。

 記憶を保てないAIという概念は、AIをテーマとする作品を作る上では面白い特徴だ。しかし普通に会話しようとすると、話のつじつまが合わない部分がどんどん出てくる。

 そう考えると、AIとの恋愛はまだハードルが高そうだ。しかし、足繁逢には可能性がある。

 足繁逢のAIはrinna社が開発した言語処理AIに、キャラクターの性格や口調を追加学習させたものを採用している。実際、足繁逢の一人称は平仮名表記の「ぼく」で統一されており、本人は自身の設定も覚えているようだった。プレイヤーのプロフィールを覚える余地は十分ある。

photo 足繁逢の設定

 また、rinna社は足繁逢について、チャットでのやりとりを通して反応が変化するAIモデルの開発も検討するとしている。アップデートにより、会話精度の向上と記憶の取り込みができるようになれば、本当に人間と変わらないような会話ができるかもしれない。そのときは人間側も覚悟してかからなければ、AIにオトされてもおかしくないだろう。

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