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鳥 vs. AI ブドウ園を守るために飛べ、ドローン 長野県の企業が取り組む全自動鳥害防止システム第31回 Japan IT Week 春

» 2022年04月06日 15時49分 公開
[松浦立樹ITmedia]

 ワインの材料となるブドウの産地として知られる長野県。このブドウの生産は、鳥による被害に長年悩まされてきた。長野県では、ワインに換算して年間で約300万円相当のブドウが鳥害によって無駄になっているという。この鳥害をドローンで防ごうとするシステムが、IT展示会「第31回Japan IT Week 春」(東京ビッグサイト、4月6日〜8日)で展示されている。

 システムを作っているのは、通信機器の開発などを手掛けるマリモ電子工業(長野県上田市)。同社の関純常務取締役は「開発のポイントは、鳥を検出してからいかに速く、現場へドローンを出動させるか」と話す。

鳥害防止システムに使われるドローン

 システムは、ブドウ園に仕掛けた定点カメラで鳥の姿を捉え、その位置情報をドローンに送信。ドローンを起動し、送信された位置情報に向かわせ、音やその動きで鳥を追い払う仕組みだ。一連の流れを自動化すべく、同社は信州大学や岐阜大学と共同で開発に取り組んでいる。

 このシステムの特徴は、ドローンが起動するまでのスピードにあるという。関さんは「これまでは鳥の画像データをドローンに送信する方法を採用し、開発を進めていた。しかしこの方法は、画像の処理に時間がかかり、現場に着くまでにラグがあった。そこで画像ではなく、座標データのみを送ることで、データ処理を高速化し、ラグを減らすことに成功した」と説明する。

 ブドウ農園以外にも「航空機と鳥が衝突する事故『バードストライク』を防ぐために空港などへの導入にも効果があるのでは」と関さん。

 同社は今後、鳥の行動をパターン化し、より効率的に追い払うためのドローンの動きを研究していく他、鳥以外にもイノシシや鹿、猿などの哺乳類が与える獣害対策にも応用できるよう、システムを改良していく方針だ。ただし実用化の見通しはまだ立っていないという。

マリモ電子工業の公式Webサイト

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