ITmedia NEWS > 社会とIT >

曖昧な「ウェルビーイング」への向き合い方 従業員の“幸福度”を上げる施策の実践方法とは?(2/2 ページ)

» 2022年04月15日 07時30分 公開
[岩崎史絵ITmedia]
前のページへ 1|2       

ウェルビーイング向上を助けるITソリューション

 テレワークにはビデオ会議ツールが必要というように、企業が目指す姿に合わせて必要なITソリューションを選ぶことが重要だ。ここでは「企業のウェルビーイング施策の支援」をメインに打ち出すソリューションに絞って、その特徴を紹介していく。

 ウェルビーイング施策支援を掲げるソリューションは大きく3分野に分けられる。まず従業員の適切な働き方を把握する「勤怠管理系」、次にバイタルデータなどを活用した「健康管理系」、そして従業員エクスペリエンス向上を目的にした「ウェルビーイング特化型」だ。

勤怠管理系:働き方を可視化、働き過ぎを阻止

 多様な働き方推進の根幹に位置するのが勤怠管理システムだ。勤怠管理というと「きちんと働いているか監視する」というイメージで嫌われがちだが、本来の目的は法律にのっとって、従業員が正しく勤務しているか可視化することにある。

 例えばテレワークの場合、仕事と私生活の境界が曖昧になって、夜遅くや休日も働いてしまうなど過剰労働に陥りやすい。勤務状況を把握して働き過ぎを阻止する観点で価値がある。またオフィスにいない従業員の働きっぷりを正しく評価する意味でも有用だ。

 近年はクラウド型の勤怠管理ツールが増えており、場所を選ばず打刻できる点はテレワークと親和性が高い。月末の勤怠レポートを自動作成する機能や、勤務データを基に働き方関連法に沿った適切な働き方を提案する機能を備えるもの、給与計算システムと連動できるものなどがある。従業員の負荷はもちろん、人事担当者の工数削減にも貢献できる。

健康管理系:健康を維持し、不調を早期発見する

 ウェルビーイングという概念を意識したとき、導入の検討テーブルに乗るのが健康管理系ツールだ。健康管理に特化したサービスでは、健康診断や勤怠情報、ストレスチェックの結果などを一括管理できる。専用のスマートフォンアプリに従業員が入力した日々の睡眠時間や歩数なども組み合わせて分析し、不調の早期発見を行うサービスもある。

 能動的にバイタルデータを取得して分析するソリューションもある。スマホのマラソンアプリなどと連携して運動データを収集したり、腕時計型や耳に装着するウェアラブルデバイスを使って体温や血圧を測ったりする。建設現場など過酷な状況で働く作業員の体調をリアルタイムに見守るサービスをテレワーク向けに提供し始めた例もある。

 ユニークな例として、NTTドコモが提供する「dヘルスケア for Biz」を紹介する。これはゲームと健康管理を掛け合わせたサービスで、専用のスマホアプリを通して「高血圧改善」「メタボ改善」「健康維持」につながる健康増進ミッションを配信。ミッションの達成でdポイントがたまる仕組みだ。

ウェルビーイング特化型:新しい働き方をサポートする

 ウェルビーイング特化に分類したのは、スケジューラーやプロジェクト管理ツール、コミュニケーションツールなどから進化し、テレワークでの円滑なチームコミュニケーションや最適な働き方の提案を行うソリューションだ。

 米salesforce.comは、コロナ禍後の新しい働き方を支援するために新サービス「Work.com」を2020年に開発。従業員の健康チェックや3密を避けた人員配置計画の策定支援、社員教育用プログラムなどを包括している。管理者が従業員の健康や勤務状況をひと目で把握できるダッシュボード「Workplace Command Center」も用意した。

 併せて米Microsoftの「Microsoft Viva」も紹介する。これは「Microsoft 365」をベースにしたサービスで、従業員エクスペリエンスの向上を目的にしたプラットフォームだ。ウェルビーイングや生産性向上を目的にした「Viva インサイト」や職場全体のモチベーション向上を支援する「Vivaコネクション」など4機能で構成している。

 ここまで、ウェルビーイング向上を実現する方法を紹介してきた。制度面での施策と、ITソリューションを活用した施策の2種類があると理解してもらえただろう。ウェルビーイングは曖昧な部分が多いため取り組みづらいと思いがちだが、きちんとサポートしてくれるITソリューションがそろっている。今回は健康管理周りにフォーカスしたが、自組織で目指す姿に合わせて必要なソリューションを検討するのがベストだ。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.