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変わりつつあるSaaSの買い方・選び方 ユーザーが参考にする情報は? 米レビューサイトのCEOが分析(1/2 ページ)

» 2022年05月23日 12時15分 公開
[本多和幸ITmedia]

 新型コロナ禍が大きな契機となり、業務のデジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の基盤を整備する需要が膨らんだことなどを背景に、SaaS市場は大きく成長している。これは日本に限ったことではなく、グローバルで共通の傾向だ。

 法人向けIT製品のレビュープラットフォームを運営する米G2のゴダール・アベルCEOは、ソフトウェアの重要性はかつてないほど高まっておりSaaSベンダーのビジネスチャンスが広がり続けていると強調する。一方、グローバル市場ではユーザーの購買行動や情報収集の手段に変化が起こっており、SaaSビジネスの成長には、この動向への対応が必要と分析する。

photo 米G2のゴダール・アベルCEO

 アベルCEOはIT製品口コミサービス「ITreview」を運営するアイティクラウド(東京都港区)が4月21日に開催したユーザーコミュニティー向けカンファレンスに登壇。同イベントでの講演内容から、最新のグローバルSaaS市場の動向と、日本市場への影響を探る。

中小は1社当たり平均120のクラウドサービスを活用

 アベルCEOによれば、ソフトウェア産業の世界的な好調は一過性のトレンドではなく、長期のトレンドであるという。「ソフトウェアの市場は20〜30年前と比べて10倍近い規模に成長し、6000億ドル規模の世界的産業になった。実装やコンサルティングなどの関連サービスも含めると1兆ドル規模だ。今後30年でソフトウェア業界はさらに10倍もの成長を遂げると予測する投資家もいる」(アベルCEO)

 直近の市場の伸びに大きく貢献しているのはSaaSだ。G2ユーザーの購入履歴を追跡できるサービス「G2 Track」から得られたデータによると、中堅・中小企業は2020年時点で、1社当たり平均120のクラウドアプリケーションを利用している。これは19年比で1.38倍に当たる。

 大企業でもこの傾向は同様だ。セキュリティソリューションなどを提供する米Netskopeの調査によれば大企業は1社当たり1295のクラウドアプリケーションやクラウドサービスを利用しており、その数は上昇傾向にある。

 この傾向はG2の利用動向からもうかがえる。SaaS市場が活発になり、さまざまな業界、多様な業務に対応するアプリケーションが出てきた結果、G2上でサービスを分類するカテゴリーの数が増加傾向にある。

ユーザーはもはや既存の市場調査を信用していない?

 一方、SaaS市場拡大の裏側では、ユーザーによる意思決定のプロセスの変化が見られる。特に米国では、ベンダーの公式サイトやアナリストの意見など、これまで主流だった情報ソースをユーザーが信じなくなってきているという。

 G2が2021年に1000人以上のソフトウェア導入担当者を対象に行った独自調査によれば「米Gartnerや米Forresterのような市場調査会社やアナリストを信用している人は全体の4%。ソフトウェアベンダーやそのWebサイトを信じている人も38%だった」(アベルCEO)。

photo G2の独自調査ではSaaS導入時の情報源として「ユーザーレビューサイトを最も頼りにしている」割合が86%に

 「アメリカのソフトウェアベンダーはマーケティングが非常に上手なので、この先数年は実装されないようなことまで誇張して市場にアピールしてしまうことがある。そのせいで多くのユーザーが非常に疑い深くなっている。それが38%しかソフトウェアベンダーのWebサイトを信じていないという結果につながったのだろう」(アベルCEO)

 一方、調査対象者の86%が情報源として「ユーザーレビューサイトを最も頼りにしている」と答えたとして、自社プラットフォームの優位性を主張する。要因についてアベルCEOは「新型コロナ禍でECサイトの利用が急増したこともあり、AmazonのようなECプラットフォームでユーザーレビューやインサイトを参考にする動きは従来以上に広がった。この流れがB2Bの世界にも拡大した」と分析している。

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