これはWindows 95を動かすために必要となるハードウェアの仕様をまとめたもので、Windows 95がMicrosoftの開発によるものだから、Microsoftがこれを出すのはまぁ自然と言うか、PCベンダーに対してそうした仕様を提示するのは当然なのだが、面白いのはこれがIntelと共著になっていることだ。要するにWindows 95を動かすためのハードウェア仕様を、MicrosoftとIntelが共同で決めた、ということになる。もっともこの時点では、例えばUSBは存在していないし、ACPIもまだ仕様策定の作業の最中であって、この時点ではAPMしかない。
それどころかキーボードはPS/2に移行しつつもまだそれ以前のPCキーボードが広く使われていたし、マウスもPS/2マウスだけでなくBus Mouseが広く使われていた。プリンタはIEEE-1284(いわゆるCentronics interface)がメインで、例外的にSCSI接続プリンタとか変なものがあったりしたという具合。CD-ROM I/FもまだATAPIが出てくる前の話だ。もっと言うならば、そもそもPnP ISAがリリースされたのが1994年5月で、拡張カードのマーケットがゆっくりとPnP ISA対応に移行を始めようという時期だったから、「どこからどこまでのハードウェアをWindows 95でサポートするか」という話を決めるのは、PCベンダーだけでなく当のMicrosoftにとっても重要な話であり、こうした書籍というか仕様書が出てくることそのものはごく真っ当である。
ただその仕様策定にIntelが全面協力していたというあたりに、この当時のWintelの結びつきの強さが見える。当時はまだIALが活発に活動を行っていた時期であり、MicrosoftとしてもこのIALの存在を前提に仕様策定作業を共同で行っていた、と考えるのが自然だろう。
正直、“Hardware Design Guide for Microsoft Windows 95”に関して言えば、「Windows 95でサポートする既存ハードウェアを示すとともに、その仕様を改めて定める」以上のものではなかった。
PnP ISAに関してはWindows 95で多少新機能が追加になっているから改定の部分もあるが、全体としてみれば新しいハードウェアの提案などは殆ど無い。まぁ考えてみれば当然の話であって、そうでなくても野心的なソフトウェアというかOSなのに、新しいハードウェアとか仕様を入れたら失敗待ったなしである。堅実に行きたい、というのは自然な流れであろう。
だんだん変わっていくのは、これに続く仕様がリリースされてからである。
このあとMicrosoftは、
を、相変わらずIntelと共著でリリースする。
PC 97まではHardware Design Guideなのか、PC 98以降だとSystem Design Guideになっているのが興味深い。またこのPC 97 Hardware Design Guideも趣が深い。全体はPart 1(System Design Issues)からPart 4(Device Design Guidelines)+付録の構成だが、例えばPart 2を見ると、
という3つの章に分かれ、それぞれのPCの構成目的と必要な要素、オプションなどが定義されているという具合だ。
ちなみにそれぞれのMicrosoftによる定義は、
となっている。
この定義にどこまで意味があったのか? というのは微妙なところだが、一応PC 99まではこれにMobile PCを加えた4つのPCが定義されていた。実をいうと、これに先立ちMicrosoftではSIPC(The Simple Interactive Personal Computer)という取り組み(というか、Initiative)を1996年に発表している。
これは1996年のWinHECで発表されたもので、TVとPCの融合というか、PCをTVと同じような家電製品に位置付けるための取り組みで、当初は500ドル程度で提供できることを目論んでいた。このSIPCそのものは、もうちょい壮大な思惑もあったのだが、結果としてポシャったのでその話は置いておく。
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