だがIE1.0の頃、IEは正直、使うモチベーションの湧かないソフトだった。
NCSA Mosaicは(多くの場合)無料でダウンロードできたし、IEと同じくNCSA Mosaicをベースに開発された「Netscape Navigator」もあった。正直、当時の完成度ではNetscapeの方がずっと上で、IEを使い続ける人は少数派だった。「Plus!」が売れたのはご祝儀というか、お祭りのなせる技のようなところがあった、と思っている。
というわけで、ここで1つのビデオを見ていただこう。Twitterでもバズっていた動画なので、見たことがある人も多いのではないだろうか。
1990年代、コンシューマーにWebが普及していく中で重要だったのは、「どこが入り口になるか」ということだった。いわゆる「ポータル」の取り合いが始まる訳だが、その核にあったのがWebブラウザである。どこがトップページになっているかが重要だった訳だが、そこでは、Webブラウザそのものを押さえることが重要であり、ポータル戦争とブラウザ戦争はほぼ同時にスタートする。
同じNCSA MosaicからスタートしたソフトであるIEとNetscapeが、それぞれ開発を進めて別のものになっていきつつ、ポータルとブラウザという2つの戦争の軸になっていくわけだ。
「Microsoftはバージョン3から良くなる」などといわれるが、IEもその逸話に漏れない。
1996年に登場したIE「バージョン3」=IE3は、IE2以前とは全く違うものになっていた。IE3からはSpyglassからライセンスを受けた、NCSA Mosaicのソースコードを使っていないからだ。ライセンスを買って得た時間とブランド名を生かして作られたのが「IE3」、ということになる。
ここからIEの完成度は上がる。特にユーザー数が増えたのは、OSのファイルブラウザである「エクスプローラー」との統合を進めた「IE4」(1997年)からだろう。
IE3とIE4は、後に続くIEの基礎を作ったバージョンと言っていい。
ポイントは2つある。
1つはIE3から「ActiveXコントロール」に対応したことだ。
いわゆるプラグイン機能を実現するための機能だが、Windows上で動くアプリのコードそのものなので、動画の再生から認証からまで、極めて多くのことに利用できたのが特徴だ。当時のWebブラウザ環境において、いわゆる「Webアプリケーション」的なものを作るには便利で、ショッピングや企業内システム、官公庁など幅広い領域で使われた。一方で、便利な分セキュリティ上のリスクにもなりやすく、Webアプリにもかかわらず対応ブラウザが実質IEのみになる、という欠点も抱えることになった。
2つ目はIE4で「OSとの統合」が進んだことだ。
OSにブラウザが標準搭載されてくるのは、今も昔も変わらない。だがIE4では、ファイルブラウザとWebブラウザに共通の要素が多数あることから、Windowsの中によりIEをインテグレーションする方向へと舵を切った。
結果として、Windowsを使う限りIEはファーストチョイスであり、不可分なものになったわけだ。
ここでIEの完成度が低いなら、それでも無視して他のブラウザが使われるだけだ。だがIEの完成度は上がっていたし、タイミング的に、Netscapeの方も機能搭載量のバランスの問題からか、完成度を下げていた時期でもある。特にIE4は、HTMLレンダリングエンジンを「Trident」(MSHTML、の名称の方が通りはいいかもしれない)に変え、その後の基盤となった。
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