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さようなら、全てのインターネット・エクスプローラー(4/5 ページ)

» 2022年06月17日 09時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

Webの使い方が変わって「IE」の時代も終わる

 Microsoftの独禁法裁判の影響、そして、OSへのブラウザ統合に対する批判が増え始めると、Firefoxのシェアも拡大した。

 とはいえ2007年くらいまでは、IE以外を使うのは「一部の人」。シェアが増えてはきたが、多数派は、最初からついてくるIEを使っている。

 それがひっくりかえり始めるのは、2008年に「Chrome」が登場してからである。

初代「Google Chrome

 その前の2005年、アップルは自社で作っていたWebブラウザである「Safari」のエンジンである「WebKit」をオープンソース化する。

 WebKitをベースにする形でChrome(そしてそのオープンソース版であるChromium)が作られると、快適さが支持されて利用者が一気に増えてくる。

 Firefoxで「ブラウザを単独で入れて使う」ことに市場が慣れていた、ということもあるだろうが、IEだけでなくFirefoxのシェアも一気に奪ってメジャーな存在へと変わっていく。

 背景には、Gmailに代表される「使いやすいWebアプリ」の普及がある。それらを使うにはIEよりChromeの方が快適で、検索にもGoogleを使う以上、Chromeを使うのがベスト、という時代がやってきていた。

 PCで多く使うものがWebアプリになり、そのWebアプリの作り方も、2008年からやってくるHTML5の波で大きく変わっていく。

 そうすると、PCの使い方も変わってくるので、IEを選ぶ理由がさらに減っていく。もちろん、IEも進化はしており、特にIE8(2009年)・IE9(2011年)でモダン化が進められ、HTML5対応も強化されたものの、Chromeの勢いを止めるには至らない。IE8からはOSとの統合が弱くなり、アンインストールも可能となっており、過去のIEとは随分違った姿になっていた。

 もう1つの変化が「モバイル」だ。

 2007年に「iPhone」が、2008年に「Android」が登場すると、スマートフォンの時代が本格的に到来する。そこではPC向けのWebをそのまま見ること、そして、モダンな構造のWebアプリを使うことが当たり前になっていった。

2007年に発表された初代「iPhone」からWebブラウザ「Safari」を搭載していた(出典:Internet Archive

 iPhoneのブラウザは「Safari」、Androidのブラウザは「Chromiumベース」で、どちらもWebKitをもとにしている。(Androidの場合、4.4からはWebKitからフォークしたBlinkがベース)

 こちらはIEとは関わりなく広がっていき、ネット利用全体で見ると「WebKitベースのブラウザの支配率」が高くなっていった。

 これらのことから、IEにこだわる必然性はどんどん薄れていた。結果としてMicrosoftも、新ブラウザ「Microsoft Edge」への移行を進める。初期には独自の「EdgeHTML」エンジンだったが、結局2019年にはChromiumベースへと移行、現在の「Edge」に至っている。

 サポート期間終了以前に、現行Windowsである「Windows 11」には、IEは組み込まれていない。

 厳密にいうと、OSの中にIEのコンポーネントである「MSHTML.DLL」は残っているし、「LTSC(Long-Term Servicing Channel)」と呼ばれる長期サポート契約版では提供されるから、「全てのIEが使えなくなる」わけではないが、6月16日が1つの区切りであるのは間違いない。

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