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さようなら、全てのインターネット・エクスプローラー(3/5 ページ)

» 2022年06月17日 09時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

IEの寡占は「Yahoo! JAPAN」も強くした

 結果として、わざわざ別のソフトをインストールしなくてもいい、という点と、業務システムでの利便性の2点があって、IEは急速にシェアを伸ばすことになる。

 一方日本でも、PCのOSであるWindowsにIEが組み込まれ、さらに、多くのPCでマーケティングキャンペーンとして「Yahoo! JAPAN」がトップページに設定されたことは、ポータルサイト・検索エンジンとしての「Yahoo! JAPAN」成長を促した。海外でGoogleが伸びる一方、日本は長くYahoo! JAPANが強く、そこから連動する形で「ヤフオク!」「Yahoo!ニュース」なども定着していく。Yahoo! JAPANが日本を代表するネットサービスになっていったことと、Windows+IEのシェアの高さは無縁ではない。

2003年当時の「Yahoo! JAPAN」(出典:Yahoo! JAPAN Tech Blog

 だが、それが本当に良いことだったか、というとまた別の話である。

 当時はMicrosoftに対しての独占禁止法訴訟の嵐が吹き荒れていた。OSとブラウザ、そしてポータルを一体化する戦略は、まさにMicrosoftの独占を強化する方向につながった。

 IEとその上で動いていたActiveXコンポーネントに依存するシステムを置き換え、どのブラウザでも動くものにするにはかなりの時間がかかっている。ただ2000年代前半、このことは「独占」の議論を除けば、多くの人にとって大きな問題ではなかったのかもしれない。しかし、それがある種の「停滞」であったのも間違いはないだろう。

Netscapeへの不満から生まれる「Firefox」

 ブラウザ戦争の様相を変えたのは、IEへの不満だけではなかった。強いライバルであったNetscapeへの不満でもある。

 2000年前後、Netscapeは機能拡張路線に入り、メールなどさまざまな機能をバンドルする方向にあったが、それを不満に感じた人々が「ブラウザのみを使える、シンプルなもの」を求め、開発を始めた。

 Netscapeからは同社のコードがオープンソースの形で提供されたので、それをベースにした「Mozilla」が生まれる。そしてさらに、それをベースに作られたのが「Firefox」(2004年)である。

「Mozilla Firefox 1.0」(出典:Wikipedia

 PCにおいて、Firefoxという「良い代替手段」の登場は、IEのシェアに影響を与え始める。

 また、PC以外への組み込みという意味で、海外では「Opera」、日本では「Netfront」などのブラウザが登場した。Webが生活基盤となっていく中、PC以外にWebブラウザが進出していくのは必然。ここには、IEの姿はなかった。この点についてはさらに大きな津波がやってくるのだが、それはまた後で述べることにしよう。

日本のACCESSが開発した「NetFront」は「PlayStation Portable」(PSP)などのゲーム機にも搭載された(出典:Wikipedia

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