本連載では、B2B SaaSや業務システムを中心にUI/UXデザインを手掛けるベイジ(東京都世田谷区)が、SaaSにありがちなUIデザインの問題を実例を交えつつ解説。SaaSスタートアップなどが、ユーザーの満足度を落とさないための改善方法を説明する。
第3回は、画面表示や機能の意味を補ってくれる便利なパーツ、「アイコン」についてご紹介します。
アイコンはほとんどのSaaSで使われているUIデザイン上の重要な要素ですが、使用する上で守るべきルールがいくつか存在します。「どんな時もアイコンを使えば情報を省略できて直感的に操作できる」ということはなく、うまく使わないと画面がより分かりにくくなってしまうこともあります。
今回例として取り上げるのは、見積り・請求管理システムです。中でも比較的利用頻度の高い、見積りの編集画面を参考に、アイコン利用の適切なルールと、効果的な使い方を学んでいきましょう。
この見積り編集画面は、すでに作成した見積りの情報を編集・削除するためのものです。取引先や見積日をはじめ、見積りの明細項目を編集できます。複製して別の見積りを作成したり、この見積りをブックマークしておいて後で参照しやすくしたりする機能も備えています。
この画面の中には、アイコン使用上のルールに反した部分がいくつも存在しています。せっかくのアイコンを活用しきれていない原因はどこにあるか、分かるでしょうか。ポイントは、全部で6つあります。
アイコンのスタイルを統一できているかに注目しましょう。ここでいうスタイルとは以下を指します。
左上のブックマークアイコン、日付入力フォームのカレンダーアイコン、画面下部のプラスアイコンなどがありますが、それぞれのスタイルが一致していません。スタイルが統一できておらずバラバラだと見た目に緩急がつかず、情報の重要度も分かりにくくなります。その結果重要なアイコンが目につかなかったり、どこから操作すべきか迷ってしまいスムーズに操作できないことにつながります。
アイコンのスタイルはアプリケーション全体を通して、特別な事情がない限り統一しましょう。
ただし、アイコンはON/OFFの状態を塗りつぶし/白抜きで表現することがあります。意図した表現の場合は統一する必要はありません。
見積金額の「i」アイコンのように、文字単体のアイコンは通常テキストと見分けがつきにくくなります。基本的に使用を避けたほうが良いでしょう。
タイトル横や品名の下に、文字の補足がなく単体で使われているアイコンがあります。アイコンをどう解釈するかは人によって異なるので、文字情報で補足しないと誤認する可能性があります。もしスペースの関係などでアイコンを単体で使う場合は、カーソルを合わせたときにツールチップ(注釈)を出し意味を補足するなどの工夫をしましょう。このアイコンを押すと何が起こるのか、ユーザーに伝えられるとより親切です。
「取引先」の項目に虫眼鏡アイコンを置いていますが、アイコンだけではクリックして使う操作部なのか、何かの補足情報としてのアイコンなのかが分かりません。
赤い削除ボタンに使われているアイコンは、紙が破れたような不思議なモチーフです。文書の破棄をイメージしてのアイコンでしょうが、一般的なシステムにおける削除のシーンでこのようなアイコンは見かけません。アイコンのモチーフは一般的によく使われており類推しやすい、ユニバーサルなものを使用しましょう。
アイコンは情報を補うことができてこそ効果を発揮します。
文字を見れば意味が明確に分かる箇所の場合では、わざわざアイコンを使うと情報過多になりユーザーの直感的な操作を妨げてしまいます。伝わりやすさが変わらない場合は、無理にアイコンを付けて情報を増やすのは避けましょう。
これら6つの問題点を改善した例が、次の図です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR