一方、セールスストラテジー部門が直面した課題もあったと田中常務。営業組織の活動をどこまで数値化して細かく見ていく必要があるのか、試行錯誤したという。
「営業活動のデータを蓄積していくと、過去のデータに依存するようになってしまう。例えば受注数の目標値に対して必要な案件数の規模感は、過去のデータから把握できる。ただ実際には、案件ごとの状況にはさまざまなパターンがあり、分析は複雑」と田中常務。
例えば案件の量が足りていたとしても、それぞれが受注につながるかどうかの“質”や、提案の時期などは異なる。受注数の目標値に対して必要な案件数の規模感を確認するとき、こういった特徴まで分析していくべきか、トライアンドエラーを重ねて確かめたという。
「受注の確度をより高められるよう、複雑な事象を一つ一つひもとき、未来の商談を分析する方向に重きを置いた。ここで得られた結果を、商談を作るプロセスの改善につなげるなど、より先手を打っていく方向にシフトした」(田中常務)
田中常務によればこうした方針は、変化の激しい環境において効果を発揮したという。その一例がコロナ禍への対応だ。セールスフォース・ジャパンでも営業活動を取り巻く環境が一変したが、すでに試行錯誤の結果で方針が固まっていたことから、先手を打つ方向性での議論に入りやすかったという。
営業組織を支援する独立部門を設置し、The Modelの円滑な運用に取り組むセールスフォース・ジャパン。ただ、セールスストラテジー部門のような組織がなければ、The Modelを取り入れられないわけではない。
「サブスクリプションモデルを採用し、営業活動のプロセスを分業して進める体制がビジネスに合っているのであれば、規模・業種問わずどの企業でも取り入れられるのでは」(田中常務)
The Modelをうまく運用できれば、商談がどういう経緯で契約に至ったのか、どのような商談が増えているのかといった営業活動の状況が明らかにしやすくなる。そうすると、データを踏まえた顧客のサポートが可能になり、顧客の成功につながる。こうしたカスタマーサクセスの活動記録は、マーケティングや営業の新たな施策にフィードバックできる。
セールスフォース・ジャパンのやり方に限らず、データドリブンな形で社内連携を図り、こうした好循環を生み出せるかどうかが、顧客満足度向上のポイントになるのかもしれない。顧客満足度の向上が売上に直結するSaaSにおいては、ビジネス拡大の成否を握るカギになるはずだ。
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