「違法アップロード映像が550万回も視聴されているのが悔しいので、これからはどこよりも早くアップロードしようと思います。だからYouTubeチャンネルに登録してください!」──クリエイターを悩ませる違法動画を巡り、アニメ「邪神ちゃんドロップキックX」(邪神ちゃん)公式Twitterアカウントのこんな呼びかけが話題を集めている。
邪神ちゃんの製作委員会は、違法アップロード動画が大量に再生されたことを受け、逆に公式側がいちはやく“切り抜き動画”をYouTubeにアップロードすることで対抗。さらに海外の違法アップロード動画から英語字幕を転用するなど工夫した結果、公式YouTubeチャンネルの登録者数を伸ばせたという。取り組みの詳細を、製作委員会で宣伝プロデューサーを務める柳瀬一樹さんに聞いた。
邪神ちゃんドロップキックXは、テレビ東京などで7月6日から週次で放送しているコメディーアニメだ。事の発端は、8日に投稿された違法アップロード動画。6日に放送した第1話のワンシーンを切り抜いたこの動画は、12日までに550万再生を突破していた。そこで製作委員会は対策として、違法動画と同じシーンの映像を公式な動画として投稿した。
その後、13日の第2話放送直後にも、同エピソードの公式切り抜き動画をアップロード。再生数を集められるよう、いずれも英語圏向けのタイトルは違法動画と同じものにした。英語字幕も違法動画のものをそのまま転用。柳瀬さんによれば、いずれもファンのアドバイスを基にした工夫という。
「ファンの人から『英語字幕と速さが大事』とアドバイスをもらったので、2話の切り抜きは英語字幕もつけてこのシーンが放送された直後、世界最速で発信した」(柳瀬さん)
一連の工夫が奏功し、第1話と第2話の切り抜き動画は、順に再生数86万回、71万回を突破(いずれも7月14日午前11時時点)。公式YouTubeチャンネルの登録者数も、13日までに約1万人増えたという。「見たことのない数値を見ることができた」(公式Twitterアカウント)
ただ、全てがうまくいっているわけではない。13日に投稿した第2話の切り抜きについては、当初は制作委員会がアップロードしたものが最も再生数が多かったものの、同日夜には後発の違法アップロード動画に抜かされる事態に。14日午前11時時点では、違法アップロード動画が93万回再生されている。
「速度、翻訳、投稿したチャンネルの登録者数の全てで勝っているのに負けた」と柳瀬さん。しかし、製作委員会は前向きに対策を取っていく方針だ。違法アップロード動画には大量のハッシュタグがついていたことから、これらを全てオリジナルに転記。「次回からはこのテキスト類を使うので負けなくなるはず。柔軟に、全てのノウハウを吸収していく」(柳瀬さん)としている。
柳瀬さんは違法動画について「特に広告設定もしていないのできっと『こんな面白い映像があるよ!』というつもりで広めたと思う」とコメント。一方で「たくさん見てもらえるのはありがたいが、できればテレビや配信、もしくは宣伝を目的として展開しているYouTubeチャンネルなどで見てほしいと思った」ことから、通報ではなく今回の取り組みに至ったという。
最後に、邪神ちゃんが目指す方向性についても聞いた。
「邪神ちゃんはファンも含めてみんなで作っている作品だという感覚がある。各国語字幕などはこれからも世界中のファンの方と一緒に作っていきたい。理想としては、公式が最速でアップロードし、世界のファンが翻訳をつけてくれる。そんな世界になったらいいなと思っている」(柳瀬さん)
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