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チップセットの誕生と隆盛、そして消滅へ“PC”あるいは“Personal Computer”と呼ばれるもの、その変遷を辿る(5/5 ページ)

» 2022年07月15日 18時31分 公開
[大原雄介ITmedia]
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チップセットは消えたのか?

 現状は? というと、AMD/Intelともにデスクトップ向けにはまだチップセットを残す構成にしている。これは製品の作り分けとか拡張性を追求しようとした場合、I/O周りだけは別チップ構成にした方が都合が良い、という製品構成上の問題に起因する。

 このため、拡張性が限られるモバイル向けについては、既に外部にチップセットを搭載せず、全部CPUパッケージに統合する形になっている。もっとも実装方法はちょっと異なっており、AMDはすべてを統合する1ダイ構成としており、一方Intelは(統合した製品もあるが、メインストリーム向けは)CPUとSouth Bridge相当の2ダイを1つのCPUパッケージに収める、という格好である。なんにしても、外から見た時にはチップセットというものがもう基板上には載らなくなった、というわけだ。

 非PC向け、つまり組み込み用途向けで言えばAMDのElan SC300/310(1996年)やElan SC400/410(1997年)、Elan SC520(1999年)が完全ワンチップ(=1ダイ)構成だったし、旧National Semiconductor(現TI)が開発したGeode GXシリーズ(1999年)や、そのGeodeの資産を買収したAMDが発表したGeode LX(2005年)はNorth BridgeをCPUに統合した2チップ構成だった。

 またIntelが2012年に発表したMedfieldというスマートフォン向けAtomベースSoCや、Clover Trailというネットブック向けSoCは、何れもチップセットの機能を全部集約した1チップ製品だし、そのAtomコアを集約した通信機器向けサーバ用の製品であるAtom C2000シリーズやその後継製品も、やはり外部にチップセットは必要としない。

 別に技術的に難しかったというよりは、やはりフレキシビリティとか差別化のためにチップセットがあった方が便利、という商品構成上の問題で残ったというのが正しいのだが、1980年代末のチップセット登場から30年強を掛けて、ゆっくりとチップセットというコンポーネントがPCのマーケットから退場しつつある、というのが昨今の動きである。

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