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64bitへの移行に20年を要したIntelの挫折 Itaniumの大失敗とOpteronへの敗北“PC”あるいは“Personal Computer”と呼ばれるもの、その変遷を辿る(1/4 ページ)

» 2022年06月22日 08時00分 公開
[大原雄介ITmedia]

 昔ながらのIBM PC、PC/AT互換機からDOS/Vマシン、さらにはArmベースのWindows PC、M1 Mac、そしてラズパイまでがPCと呼ばれている昨今。その源流から辿っていく第20回は、Intelの64bitへの移行。これが一波乱どころではなかったのだ。


 PC(というかIBM PC)はもともと16bitのIntel 8088をベースに開発され、MS-DOSもその16bitのアーキテクチャをベースに構築されてきた。

 これがなし崩しに32bitに移行したのは、まずCPUに32bitのIntel 80386が投入され、ついでこの80386の上で部分的に32bit動作をするDOS Extenderの類が出現(QEMMがこの代表例……なのだが、案外日本では知名度が低いのが残念)。ついでWindows 3.1で限定的ながら32bit動作が可能になり(この前段階としてWindows/386というものもあったが、日本では発売されなかった)、ついで32bit APIに対応したWindows 9x/Meがリリースされたことで、もう16bit CPUではいろいろ不都合がある(MS-DOSは使えても、Windowsが使えない)というところまで来た。

 ただこれに先立ちMicrosoftはWindows NTという完全にMS-DOSとは隔絶した新しいOSを開発しており、最初のWindows NT 3.1やその後継のWindows NT 3.5のリリースはWindows 95より前である。こちらは完全32bit対応であり、さらに言えばx86である必要もない構成になっていた。実際後にはPowerPCやDEC Alpha、MIPS、Itaniumなどに移植されている。

 こうした移植作業の中で、64bit対応もまた必然的に必要になった。というのは、DEC Alpha(EV5:21164)やItaniumはどちらも64bitプロセッサだったからだ。もともとMicrosoftは、Windows NTを単にコンシューマー向けだけではなく、基幹サーバなどエンタープライズ向けのOSとして位置づけていたのだ。

 初期のWindows NTではWindows NT for workstation(クライアント向け)と、Windows NT for Advanced Server(サーバ向け)の2つがあり、Windows NT 4.0ではこれがただのServer Edition以外にEnterprise EditionやTerminal Server Editionに増え、Windows 2000ではServer/Advanced Server/Datacenter Serverに進化するといった具合だった。

 そしてコンシューマー向けのWorkstationでは32bitのままでもなんとかなるが、Server向けには4GBではメモリが足りない、という話になった。実際Windows 2000 Datacenter Serverの場合は、最大32個のCPUと32GBの物理メモリをサポートするが、「これをどうやって32bit CPUで扱うんだ?」という話になる。

 念のために書いておくが、32bit CPUの定義とは(これも異論はいろいろあるが)メモリアドレスが32bitになっていることである。これで表現できるメモリアドレスは最大でも4GBであり、32GBのメモリには対応できない。

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