昔ながらのIBM PC、PC/AT互換機からDOS/Vマシン、さらにはArmベースのWindows PC、M1 Mac、そしてラズパイまでがPCと呼ばれている昨今。その源流から辿っていく第21回は、チップセットが消滅に至る流れ。Chips and Technologiesなどが作っていたアレである。
ちょっと話が戻るが、時期的には連載第14回のちょっと後、ちょうどIntelが進めていたADTが雲行きが怪しくなってきていた2001年10月、AMDは後にAthlon 64やOpteronとして製品出荷される、K8ことHammer ArchitectureをMicroprocessor Forum 2001で発表する。
このHammer、前回もご紹介したx86-64を最初に実装したプロセッサという観点で非常に重要な位置を占める製品だが、もう1つ、PC向けCPUとしては初めてメモリコントローラをCPU側に統合したという、大きな特徴を持つ製品でもある。
ちょっと古い話になるが、そもそも最初のIBM PCは、CPUとIntelの提供するいくつかの周辺チップ以外は、全てディスクリートICで構成されていた。IBM PCの回路図は連載第2回で掲載したが、例えばメモリコントローラに当たる部分は74LS158(マルチプレクサ)と74LS245(メモリバッファ)、それと“R/W Memory Control Logic”、それに“Parity Check/Generator Logic”から構成されているのが分かる。
このR/W Memory Control LogicとかParity Check/Generator Logicも回路図が示されており、Blue Book(IBM 5150 Technical Reference)のAppendix D-42以降に示されている(複数ページにまたがるので掲載は割愛する。興味ある方は“IBM 5150 Technical Reference”でpdfを検索して、確認してほしい)が、やっぱりディスクリートICで構成されている。
もっともこうしたディスクリートICを組み合わせた構成は、すぐにチップセットと呼ばれるものに入れ替わる。まずCompaqは自社の製品向けに、こうしたCPU周りの回路を複数のASICに集約したチップセットを開発。この直後にC&T(Chips and Technologies)も80286用チップセットを発表、1990年代に入るとOPTiもチップセットマーケットに参入。さらに台湾でもまずSiSとALi(Acer Laboratories, Inc.:のちのULI)の2社がチップセットビジネスに参入し、後追いでVIA Technologiesもこのマーケットに参加する。
例えばC&Tが80286向けに投入したNEAT(自宅警備員の方ではなく、New Enhanced ATの略) Chipset(写真1)の場合、オリジナルのIBM-PC/ATが94個のディスクリートICから構成されていたものを4つに集積している。
ディスクリートICを組み合わせるよりも簡単にPCが構成でき、互換BIOSがこうしたチップセットをサポートしたこともあり、AT互換機のマーケットの広がりに合わせてチップセットは急速に広まることになった。
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