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日本のテレビ放送とIP、「思てたんと違う」普及の形 嫌がっていたクラウド化に転進した事情小寺信良のIT大作戦(3/4 ページ)

» 2022年07月22日 16時47分 公開
[小寺信良ITmedia]

実は高いのがバレたクラウド

 通常、買うよりレンタルのほうが安いのが、世の常である。それは使う期間が一定で、使わない時は返せるからだ。

 どこにいても編集できる、をウリに、クラウド上の素材に対して編集を行なうシステムも、コロナ禍を境に本格運用に入っている。日本の放送業界には、Amazon AWSとMicrosoft Azureが盛んに営業をかけていたが、どうやらAWSが優勢のようである。

 ところが実際に本格運用してみると、いいことばかりではないことが分かってきた。クラウドサービスは動的にファイルの出し入れを行なうホットストレージと、静的にファイルを扱うコールドストレージに分けられる。一般的にホットストレージは高価だ。

 加えて、データを預けてアクセスする分には定額だが、データをダウンロードすると別途課金が発生する。またAPIがコールされるたびに課金されるといった料金体系では、クラウドでの番組編集は金額が不確定で、終わってみるまでいくらになるのか分からないことにになってしまう。これでは予算が立てられない。

 そこで昨今急速に人気が集まっているのが、「ジェネリックS3」と呼ばれる、AWS S3互換クラウドサービスである。「wasabi」は会社名は日本語だが、米国のボストンで起業して6年になる、ジェネリックS3クラウドサービスだ。ホットストレージのスピードを、コールドストレージの価格で提供する。またダウンロードやAPI利用に別途料金がかからないため、本当に定額での利用が可能になる。

photo ジェネリックS3としてサービスを展開する「wasabi」

 2021年11月から日本で営業を開始したが、すでに10社あまりが採用しているという。これまで何十個もあるSSDの中にバラバラにあった素材をクラウドにあげて、ローカルのマシンからアクセスするというレベルから、編集ソフト自体もクラウドへ上げて、ローカルからはブラウザで操作するといったフルクラウド化まで、さまざまなレベルに対応する。

IP中継車をすっ飛ばして、次へ

 例年福岡で開催されるQBEEは、今を去ることおよそ20年前、ソニーの機材内覧会に時期と場所を合わせる格好で他のメーカーが集まり始めたのがきっかけとなり、どうせなら1カ所で、ということで開催されるようになったという。

 そんなQBEEだが、3年ぶりの開催となる今年は、肝心のソニーが出展を取りやめるなど、波乱の開催となった。ただ、HUAWEIとソニーマーケティングの合同で、ネットワーク関係の出展は行なっている。

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