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Teslaからの警告 ルールと実態の乖離問題をどう解決するのか走るガジェット「Tesla」に乗ってます(3/4 ページ)

» 2022年07月31日 17時44分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

自動運転はルールに厳格でなければならない?

 2022年2月、米国においてTeslaの半自動運転に関するリコールが実施されました。半自動運転と述べましたが、正確には、「フルセルフドライビング(FSD)ベータ」という高度運転支援です。

 このリコールは、交通ルール上は完全停止が必要な交差点であるにもかかわらず、交差するクルマ、歩行者等がいなければ、完全停止しないで徐行して通過するという、FSDベータの機能が当局からダメ出しを食らったのです。

 おそらくTeslaのAIは、一定の条件を満たせば「ルールは完全停止だけど、危険はないので徐行で進入してもいいよね」と調教されていたものと思われます。この問題は無線アップデートで修正されました。

 このリコールの発端となった事象の賛否はここでは深掘りしませんが、考えてみれば、交通の実態に合わせてルールに反する運転をする、あるいはしなければならない場面というのは多々あります。例えば、高速道路の合流です。

 大きく円を描いて回るランプは基本的に40km制限です。そこから加速のための合流区間に入りますが、100kmで流れる本線に合流するのに合流車線直前まで40kmを守って走行するのは、後続車に申し訳なく、かなりの強心臓でなければ耐えられません。合流車線はどんなクルマでも本線の制限速度まで加速できるという前提で設計されているそうですが、実態からは大きく乖離しています。

photo 東名高速道路青葉インターチェンジのなが〜いランプ。ここをルール通り40km/hキープで走るのは、かなりの強い信念がいると思うのだがいかがだろうか?

 仮に、ルールに厳格な自動運転が実用化され、手動運転のクルマと混在交通が普通になると、少なからず混乱が起きてしまうのではないでしょうか。筆者の場合、比較的ルールを守るドライバーなので、後ろにピタリと張り付かれ、あおり運転の一歩手前とも思える状況にしばしば遭遇します。

 帰宅後、ダッシュカムのサイドカメラに録画された追い抜きざまのドライバーの顔を見ると、憤怒の表情でこちらをにらみつけている場合もあります。こわいコワイ怖い。

 実際、このようなルールと実態の乖離に関する問題は、警視庁の「自動運転の段階的実現に向けた調査検討委員会」でも議論されています。議事概要を読むと「本線車線の規制速度と実勢速度のかい離について」というテーマで識者がさまざまな意見を述べています。

 次の動画は、首都高速道路の浜離宮から、みなとみらいの出口までをコマ録りで録画したものです。オートパイロットを制限速度の60km/hに設定して走行しています。前方はがら空きで、当時、バックミラーを見ると、筆者のModel 3の後ろにクルマが詰まっていました。

 多摩川を渡るまでは、多くのクルマがしびれを切らしたように右側を抜いていきます。首都高横羽線の実効速度は、70〜80km/hといった印象です。他のクルマからすると、「とろとろ走りやがって空気読め」といったところでしょうね。

 神奈川区間に入ると渋滞気味で、ほっと安堵したものの、横浜付近で空いてくると、とうとう後ろからの圧力に耐えかねて、オートパイロットを65km/hに設定しています。ちなみに、メーター読みは65km/hですが、GPS計測の実測値では、62km/hといったところでしょう。

 仮に日本でもFSDベータが解禁になると、どうなってしまうのでしょうか。品行方正にルール通りに走行しているクルマがあり、よく見ればTeslaだった、などということになったらそれはそれでシュールな光景です。

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