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Insta360の新製品はWebカメラ 3軸ジンバル搭載の「Insta360 Link」を試す(2/2 ページ)

» 2022年08月02日 22時00分 公開
[渡辺まりかITmedia]
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さまざまな機能を実際にテストしてみた

 さて、評価機を借りて試用するにあたり、気になったのは自宅の仕事部屋の散らかり具合だ。筆者の部屋にはさまざまな製品のサンプルや、クラウドファンディング、通販などで入手したものが散らばっている上に、段ボール箱も積み上がっている。当初は「この部屋を世間にメディアで公開するのか!?」と戦慄した。

 そんな時はLink ControllerでAIズーム機能をオンにした上で、ズームを「顔」に設定しておけば、顔をメインの捉えた状態で追跡してくれる。これで部屋の状態をフレームインさせずに済む。

最もよく使うと思われるのが、Linkを自分にフォーカスさせて自動追跡させるAI追跡機能だろう。ON/OFFにはジェスチャー制御を用いることができる。ジェスチャーは「パー」

 実際に使ってみて興味深かったのは、ジェスチャーを認識する許容範囲が広いということだ。AI追跡のON/OFFを行うには、手をパーの形に広げてフレームインする必要があるが、手のひらを向けるだけでなく、手の甲を向けても受け付けてくれるし、体の輪郭と手が被っていても反応しやすい。認識するまでには2秒ほど手の形を維持する必要があるため、通常のしぐさで誤認識しやすいといったこともなかった。

 Link Controllerでは、前述のAIズーム機能のほか、HDR機能、各ジェスチャー制御のON/OFF、蛍光灯のちらつき防止機能、被写体の追跡スピード、明度、彩度、コントラストなどの設定、ジンバル操作などを行える。

机上をきれいに写せるデスクビューモード

 Link Controllerから有効にできる機能の中でも特徴的なのが、カメラのレンズの向きを机上に素早く移動させて上下反転させることで、ユーザーの手元を相手に写せる「デスクビュー」だ。

デスクビューモードに切り替えたところ。レンズが45度下向きになり、手元のドキュメントを見やすくする。単にカメラの向きと上下を変えているわけではなく、ノートを持っている指がゆがんでいることから画像処理を施していることが分かる

写りは良好、明るく撮れる

 顔映りが良くなるような明るさにレベルを自動調節してくれる機能も実際に使ってみて好感触だった。

 照明をONにした場合と日没直前の窓から入り込む自然光だけの環境での顔の見え方の違いをチェックしたところ、人物の周囲の明るさに変化があったものの、顔の明るさは一定に保たれた。これは特に女性にはうれしい機能だろう。

照明のON/OFFで一瞬だけ暗くなるが、すぐに顔の明度レベルは安定する。背景の白壁を見比べると、顔に明るさを合わせていることが分かる

専用マーカーを使うホワイトボードモード

 もう一つスマートだと感じたのが、オンライン授業などの用途で役立ちそうな、専用マーカーを使ったホワイトボードモードだ。

 カメラをズームしたり、プリセットポジションを活用してホワイトボードをよく見えるようにする方法は他社製品でもあるが、Linkではホワイトボードを識別するためのマーカーを利用する。マーカーをホワイトボードの四隅に貼り付けておくことで、ホワイトボードが正面に置かれていない状況でも画像処理によって内容をきれいに写せる。

 オンライン授業のような場面で、カメラの設置場所の自由度が上がることが大きなメリットだ。板書しながら「これ、ちゃんとみんなに見えているかな?」と不安を感じないで済むだろう。

Insta360 Link公式動画より。ホワイトボードの四隅にマーカーを貼り付けている。制御のためのジェスチャーは「ピース」だ

 この他にも、製品版ではマウスでジンバルの位置を制御したり、マウスホイールでズームイン/アウトを行える機能を実装するという。

本体に搭載しているマイクの質は?

 コミュニケーションの質を左右する「声」にも注目したい。あえてインカムをつけずに、Linkに内蔵しているマイクで部屋の隅まで動きながら発話してみた。また、カメラから近い距離で「ヒソヒソ声」でしゃべるテストも行ってみた。

 さすがにヒソヒソ声は聞き取りづらいが、それは対面で同じ空間にいても同じだろう。距離に関係なく、同じレベルで音声を拾っている。ちなみに、真上にはエアコンがあり、ゴウゴウと音を立てていたのだが、その音が入っていないことから、ノイズキャンセル機能が優秀であることも分かった。

Insta360がなぜWebカメラ?

 Insta360といえば、気軽に持ち運んで高度な映像を撮影できるアクションカメラのメーカーというイメージが強い。スマートフォンに取り付けられる360度カメラから始まり、最近は1インチの大型センサーを搭載して6K解像度の360度映像を撮影できる「Insta360 ONE RS 1インチ360度版」や、アクセサリー感覚であらゆる場所に装着できるアクションカメラ「Insta360 GO 2」などを投入している。

 Insta360がWebカメラを市場にリリースしたのは、これまでの製品で得た画像処理技術が、人々のコミュニケーションを円滑にすることに役立つと考えたからだという。昨今は自宅などでのリモートワーク、学校のオンライン授業、ダンスやヨガのオンラインレッスンといった機会が増えている。こうした状況下でやりとりする際の“質”は、カメラやマイクのクオリティーによって決まると言っても過言ではない。

 同社は「日常をよりよく記録、共有するのを応援する」というミッションを掲げている。今回のInsta360 LinkはWebカメラとしての基本性能が高く、「話者やホワイトボード、デスク上のメモなど、見せたいものにフォーカスして音声をしっかり届ける」という目的をしっかり果たせることから、十分に「日常をよりよく記録、共有する」ということを実現できるシステムだと感じた。

 今回はWebカメラの投入となったが、Insta360のミッションをさらに実現させるために、今後はどんな製品が出てくるのか楽しみだ。

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