SFプロトタイピングを始めるに当たり、2050年の食卓の姿ワーキングチームのメンバーを新規で募集すると143人が集まりました。業種は食品メーカーや研究組織、商社、ベンチャーキャピタルなどさまざまです。年齢も20代から最年長は70代と幅がありました。
2021年の協議会の活動の中では、参加者が最も多いワーキングチームだったそうです。その理由として、専門的な知識を必要とせず誰でも参加できること、そして未来の食の在り方はどのような人にも関わってくるからだと高梨さんは言います。
ワーキングチームでは、まずWeb会議形式の活動を2回開催しました。第1回目は「手法の理解」として、そもそもSF思考とは何かといった基本的な理解を講義形式で深めました。
第2回目は「ビジョンの素材出し」として、SF小説作りの材料になる未来の食卓の姿やガジェットに関するアイデア出しを行いました。ここでは2050年の食卓を変えている技術や製品、サービスは何か、そしてそれらを必要とするユーザー像を議論しました。
「アイデア出しでは、未来にあったらいいと思うフードテックに関係した用語をA群として、それに関係ない用語をB群として書き出し、その2つを組み合わせて新しい造語を作りだしました」(室木さん)
「例えば『クロワッサン』と『進撃の巨人』で、『進撃のクロワッサン』と言ったよく分からないワードをたくさん作りだし、『進撃のクロワッサンとは何だろう、進撃のクロワッサンを使っている人物はどういう人だろう?』と議論を重ねてとストーリーを作り出していきました」(高梨さん)
お二人ともこうした議論の仕方はこれまで経験したことがなかったため、とても新鮮だったといいます。
「4時間をかけた議論でしたが、それでも時間が足りませんでした。皆さんアイデアをたくさん持っているんだと驚きました」(室木さん)
2回の活動後、実際に小説作りに携わるタスクフォースのメンバーとして、ワーキングチームの中から10人程度を募集しました。集まったタスクフォースの参加者を5人ずつに分け、SF作家の松崎さんと柴田さんの2チームに振り分けました。
その両チームを、SFプロトタイピングのファシリテーター役である大澤博隆さん(筑波大学 システム情報系 助教:当時)と宮本道人さん(筑波大学 システム情報系 研究員:当時)がアシストします。活動では他の参加者とのコミュニケーションを通じて、ビジョンの素材出しで抽出したアイデアを深掘りしながらSF小説をそれぞれ2作品ずつ作り上げるプロセスに移っていきました。
「タスクフォースの参加者は和歌山県や海外から参加した方もいました。通常なら東京に集まっての実施になったのでしょうが、Web会議にしたことで誰もが参加しやすくなりました」(高梨さん)
「3回のタスクフォースは、1カ月に1回、3カ月にわたって行いました。参加者は連続して参加できることが条件で、毎回4時間かけてみっちり議論を重ねてもらいました」(室木さん)
タスクフォースへの参加希望者は多く、競争率は約2倍。残念ながら選ばれなかった人もいたそうです。また、参加者は食品業界や大学関係の人、広告代理店に勤める人などさまざまでした。
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