コクヨはこの「正直」に作るというコンセプトをとにかく大事にしていて、現場では「正直チェックリスト」というものを作り、細部まで「これが正直かどうか」を確認していったという。それはまるで、「これはロックか、そうでないか」をいちいち判定していた高校時代を思い出させるような話ではあるが、切れ味の良さ、長く使えるかどうか、愛着が持てる道具になっているか、といった部分をチェックするに当たって「正直」という基準を設けるのは、良いアイデアだったと思う。
その正直さはラインアップにも表れている。今回、HASAは強力タイプの「HASA-001」(2420円)、強力・ロングタイプの「HASA-002」(2750円)、紙・工作用の「HASA-003」(2420円)の3種類を用意しているのだが、強力の2種はコクヨ独自設計のカーヴ刃を、紙・工作用にはコクヨ製品では久しぶりのストレート刃を採用した。
「従来のコクヨのカーヴ刃は、根元の方はまっすぐになっていたんです。それを根元までカーヴを付けて、根元もより切りやすくしています。また、コクヨのカーヴ刃は、刃のどの部分でも開きが同じ角度になるというものではなくて、刃先で力が伝わりやすくなるようにカーヴを計算しています。元々、刃の根元は力が発揮されやすいので力が余ってるんです。その余分なエネルギーを刃先に分配して伝えるようにしたのが、コクヨのカーヴ刃です」と藤谷氏。
ただでさえカーヴ刃で力が伝わりやすくなっている上に、鋼材をハンドルの奥まで入れることで、剛性を高めて耐久性も向上させた。それが力の伝わりやすさにもつながるなど、細部に凝ることが、結果的に機能のアップにつながっているのが、この製品の大きな特長なのだ。
また、カーヴ刃はその構造上、どうしても刃の幅が広くなってしまう。すると細かい部分を精密に切るといった用途には不向きになってしまう。そこで、紙を切ったり、細かい工作をするのに向いた、ストレート刃の「HASA-003」も用意している。ストレート刃は、今回の刃の製造を担当した貝印側で設計。力が伝わりやすいカーヴ刃は、厚紙やブリックパックなどを切るのに威力を発揮するけれど、コピー用紙程度の厚さの紙を切るなら、そこまでの力は必要ない。その分、細かい作業が可能なストレート刃もラインアップに加えたということだ。
実際、はさみは専門性が高い道具なので、本来は切るものに合わせて別途用意するのが本筋だ。ただ、日常生活でいちいちはさみミを取り替えてて使うのは現実的ではないということで、普段使いにはHASA-001を、段ボールなどを頻繁に切るなら、より力が入れやすく刃渡りも長いHASA-002を、細かい作業や紙を1枚ずつ切るような作業が多いならHASA-003をというのが、今回のラインアップ。製品名が、型番そのままになっているので、この先、「HASA-004」など別の用途の製品も出そうだが、とりあえずのラインアップとしては、これで十分だろう。
残念なのは、現状、左利き用の製品がないことだが、それもこの製品が売れれば実現するのではないだろうか。「正直、というコンセプトからいえば、出すことが正直ですよね」と藤谷さんも仰っていたことだし。
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