「ハンドルは、かなり作り込みました」と藤谷氏は言う。見た感じ、黒一色で、シンプルなデザインに見えるが、実は、かなり細かいところまで考えられている。
「ハンドルの大きさは、HOL(人間生活工学研究センター)の統計データで、30代から50代の男性の人口カバー率が75%から95%に入るように設定しています」と藤谷氏。
実際に使ってみたところ、このハンドルは身長178cmの私も、身長150cmを切る女性も、同じく握りやすいと感じているので、比較的、広い範囲で快適に使えるのではないだろうか。
「このはさみは、企画段階から、Takramというデザイン会社にも入ってもらっていて、製品企画段階のユーザー・インタビューやコンセプト作りから関わってもらっています。ハンドル・デザインは人間工学的なアプローチを取りつつ、よくある奇抜な形ではなく、自然な形の中で生かせないかと考えて作りました。アウトライン自体はシンプルにしつつ、厚みを出して指に当たる面積が大きくなるようにしています。なので、見てもらうと分かると思いますが、中指が触れる部分は結構複雑な曲面になっているんです」と藤谷氏。
実際、指が当たる部分のカーヴが絶妙で、持った時、開閉する時などに、角があたって痛いということがない。また、指が当たるところはシボを細かくして手触りを良くして、そうでないところはシボを粗くして傷などが目立たないようにするなど、位置によって表面加工を変えているのも細かい配慮だ。ただ、この複雑な形状が、製造行程では中々上手く成形できず苦労したという。
その他、刃に細かいガラスの粒子を吹きつけてマットに仕上げる「ショットブラスト」という加工によって、高級感を出すと同時に、刃が持つギラついたイメージを低減。また、刃付けを2回に分けて刃先に角度を付ける「2段刃付け」によって、刃先の薄い部分を最小限にして刃こぼれを防ぎ、より耐久性を増すなど、日常生活で使うはさみとして、考えられる限りの「正直さ」で、長く使える良い道具としてのはさみを作っている。
何というか、持ってるだけで色々切りたくなるようなはさみなのだ。
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