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「ETC2.0」がサーバに送信している速度や位置情報、民間活用の動き始まる トラック運行情報や保険にも(3/3 ページ)

» 2022年10月24日 09時55分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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ETC2.0情報、民間活用の動き

 ETC2.0機器の普及に伴い、プローブ情報を民間が活用できる仕組みの整備も進んでいる。国交省は18年8月に、道路新産業開発機構(HIDO)を通じてETC2.0のプローブ情報を民間に提供することを決めた。物流事業者のトラックなどの運行管理に、ETC2.0のプローブ情報を活用しようという考えだ。

道路新産業開発機構(HIDO)が考えるETC2.0のプローブ情報の活用イメージ

 スマートドライブは、プローブ情報の活用に期待する1社だ。7月にHIDOと連携し共同実証を開始した。

 トラックなどの運行管理では、デジタルタコグラフ(運行記録計)などのデータをクラウドにアップロードすることで、今どこを走っているのかといった位置確認が可能になる。しかしデジタルタコグラフは高価で、導入に二の足を踏む会社も多かった。ETC2.0ならば、物流会社向けの高速道路割引が充実しているため導入済みの企業が多い。

 「いきなりクラウド対応デジタルタコグラフは入れられないという企業でも、ETC2.0のプローブ情報を使えば十分なリアルタイム性が得られる」とスマートドライブで技術開発を担当する元垣内広毅取締役は話す。

 物流会社側の許諾を得たらHIDO経由で国交省のサーバにあるETC2.0のプローブ情報を取得。スマートドライブのプラットフォームでデータ欠損などを補完し、運行管理に活用できるサービスとして提供する。

 物流会社からすれば、「あとどれくらいでトラックが到着するのか」という問い合わせに対し、ETC2.0のプローブ情報を元に「今このあたりを走っています」とほぼリアルタイムで回答できるようになる。スマートドライブでは、すでに数百台規模のプローブ情報を取得してサービスに活用している。「位置を確認できるし、完全ではないが日報も出せる。クルマの使われ方のレポートも作成できる」(元垣内氏)

 現在はITSスポットが高速道路ならびに主要国道のみと数が少ないため、高速道路を降りてしまうと情報が送信されないという難点もある。ただし物流施設内に設置する簡易型ITSスポットの準備も進んでおり、ニーズを徐々に満たしつつある。

高速道路や主要国道以外でもプローブ情報をアップロードできる簡易型ITSスポット

 ETC2.0のプローブ情報活用はまだ始まったばかりだ。「大々的に活用しようとするのは当社が初なのではないか」と元垣内氏は言う。トラックのドライバーにも時間外労働の上限規制が適用になる「物流の2024年問題」に向けて、クラウドを活用した運行管理の重要性は増すばかりだ。しかし、クラウド対応デジタルタコグラフのデータ規格はメーカー固有となっており互換性がない。ETC2.0のデータならばデータ規格が共通だというメリットもある。

 スマートドライブでは物流などの法人向けを皮切りに、ETC2.0のプローブ情報を一般消費者向けの自動車保険にも活用していきたい考えだ。「半年から1年以内には、次のステップに進めるのではないか」(元垣内氏)

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