ITmedia NEWS > 製品動向 >

限定色だったHHKBの「雪」が定番モデル化 いったい何が変わったのか 実機を先行レビュー(1/3 ページ)

» 2022年10月26日 15時30分 公開
[村上タクタITmedia]

 エンジニアや執筆を仕事にするプロフェッショナルたちから愛されるキーボードに「Happy Hacking Keyboard」(HHKB)というシリーズがある。その最新モデル「HHKB Professional HYBRID Type-S」に、ミニマリストから愛される「雪」が新定番色として設定された。

コンパクトでシンプル。打鍵感に優れたHHKBの新色「雪」

 この新色、もともとHHKB25周年を記念して2021年に発売された限定色だったのだが、非常に人気だったことから定番モデルになったという。価格は3万6850円だ。今回、その定番モデルになった「雪」の実機を紹介したい。

「馬の鞍」と「無刻印」

 その前にHHKBをおさらいしたい。HHKBは、26年前に東京大学の和田英一名誉教授とPFU研究所によって、正統派ハッカーのために、最低限度必要十分なキーを備えた、良質な定番キーボードとして設計された製品だ。

 和田教授が、当時のワークステーションと呼ばれる高性能なコンピュータを使う中で、機種ごとに異なる仕様のキーボードを使うことに不自由を感じたのだという。そこで、不要なキーをそぎ落として必要最小限度に絞った、ホームポジションから手を動かさずに全てのキーを打てる理想のキーボード配列として考案されたのが「Alephキーボード」だった。HHKBは、そのAlephキーボードをもとに作られている。

 最低限度必要なキーが厳選されたキー配列、静電容量無接点方式のスイッチによるスムーズな打鍵感、安定したクオリティーで、HHKBは多くのエンジニアや文章を書くことを生業にする人々に愛された。

 その愛情は「馬の鞍」という愛称に象徴される。

 荒野を旅するカウボーイは、馬が死ぬと馬はそこに残して行くが、どんなことがあっても身体に馴染んだ鞍は自分で担いで持って行くのだという。それと同じようにエンジニアや文筆家は、コンピュータが変わっても、インタフェースであるキーボードは馴染んだものを使い続けるとことを象徴した逸話だ。コンピュータは時代によって進化していくが、手に馴染んだキーボードは生涯使けることができる。

 この思想は多くのユーザーに愛され、HHKBは細かい改善を続けながら26年にわたって作り続けられる伝説的なキーボードになる。

 また、HHKBを象徴するのが「無刻印」モデルの存在だ。

「墨」の無刻印モデル

 タッチタイピングを極めたエキスパートユーザーには、キートップの印字は不要ということで設けられた製品だが、ある意味プロフェッショナルの意地として、愛好するユーザーが思いの他多かった。また、それが多くのファンを引き寄せたのである。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.