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アリババ「独身の日セール」、初の「GMV非公表」の理由 〜海外メディアは「数字ないと報道できない」と困惑浦上早苗の中国式ニューエコノミー(2/5 ページ)

» 2022年11月11日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

10億円だったGMVは、14年間で10兆円に

 独身の日セールは09年に始まった。11月11日は「1」が4つ並ぶことから、もともとは大学生を中心に「パートナーのいない人」たちが食事やパーティーで盛り上がる日で、アリババはECに興味を持ってもらうため、この日に引っ掛けてセールを開始した。最初の参加ブランド数はたった29で、GMVは5000万元(約10億円)だった。

 そこからの浸透はあっという間で、13年ごろになると筆者の周囲の人々も前日の10日夜からPCやスマートフォンの前で待機し、ほぼ徹夜でセールに参加するのが普通になった。セールの呼び名も、「双十一」(ダブルイレブン)が定着した。

 日本で注目されるようになったのは、「爆買い」が流行語大賞に選出された15年以降だ。当時中国で暮らしていた筆者は、日本の食品メーカーなどから頻繁に「アリババのECで商品を売りたい」と相談されるようになった。独身の日セール当日はその規模の大きさが、テレビのニュースや情報番組で1日に何度も報道されるようになった。

「独身の日セール」GMVの推移。GMVは、16年から21年の6年間でも約4.5倍

 ただメディアでのセールの扱われ方は、消費者が存在する中国と海を隔てた日本では全く違う。中国では消費者の生活に関わる重要イベントという位置付けで、セールが始まる前には「攻略法」、セール中には「物流の混乱」「不当な価格操作」などの課題があぶりだされ、セールが終わると課題を解決するための取り組みに関心が移る。

 規模が大きくなるにつれほとんどのEC企業、小売企業が参加するようになったため、アリババ以外の企業も「iPhoneの大幅値引き」「超有名タレントによるライブコマース」などインパクトのある施策を打ち出す。消費者は自分のほしいものがどのプラットフォームでよりお得に買えるか、9月ごろから目を凝らして情報を探す。

 例えていうなら、「GoToトラベル」「全国旅行支援」のような報じられ方だ。最後に発表されるGMVもニュース価値はあるが、消費者を含めセール関係者の関心はもっと違うところにある。

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