中国では19年ごろから、セールについて「右肩上がりはいつまでも続かない」「マンネリ化」を指摘されることが多くなった。アリババは人気エリアの不動産や車を目玉商品として販売するなど話題つくりに腐心し、また当初は「11月11日」限りだったセールも段々期間が延びていった。
現在、独身の日「11月11日」は、約3週間にわたるセールのGMVが出る「締め」の日で、中国での報道のピークは10月下旬に来るが、日本メディアの多くは「11月11日にセールが始まりました」と紹介する。ここも実態とのズレがある。毎年GMVが最高記録を更新する背景には、それなりのからくりがあるのだ。
独身の日セールは中国の力強い経済の象徴となり、アリババは記録の更新と世界を驚かすトピックの提供を背負わされるようになっていった。しかし20年にターニングポイントが訪れる。
アリババの創業者であるジャック・マー氏らが中国政府当局に呼び出され、「指導」を受けたのは、独身の日セールの真っただ中の20年11月初め。氏はすでにアリババグループの取締役も退任していたが、呼び出しの直後、アリババの金融子会社「アント・グループ」は新規株式上場を延期した。さらに中国当局は同月10日、プラットフォーマーの独占的な行為を規制する新たな指針の草案を発表した。
翌21年、アリババは独占法禁止違反で182億2800万元(約3650億円)の罰金を科された。プラットフォーマーは中国メディアにとって、当局の顔色をうかがいながら扱うべき「要注意案件」に変わり、アリババもグループの巨大な力を誇示するような従来のお祭り騒ぎを封印せざるを得なくなった。
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