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真面目なのに怪しさ満点、科博の特別展「毒」が面白い 「毒まんじゅう」も売ってる(3/4 ページ)

» 2022年11月14日 18時14分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 むしろ仕掛けとしてはアニメ「呪術廻戦」の五条悟役などで知られる声優・中村悠一氏による、ものすごく分かりやすく、しかも展示を見る際にじゃまにならない音声ガイドの構成の見事さの方に感心した。

 またタイアップ・ソングであるBiSHの「UP to ME」がフル・コーラス、音声ガイドで聞けるようになっているのも良かった。ちゃんと、BiSHのメンバーであるアイナ・ジ・エンドによるコメント入りなので、ファンの方は音声ガイドを借りるように。

ドクニンジンに含まれる神経毒「コニイン」の分子模型。毒は複雑な分子構造が多いような気がするが、水銀のように分子1個だけなのに毒性が強いものも存在しているのが面白い。国立科学博物館蔵

 生物や植物の標本から、分子モデル、歴史に血清、毒矢や罠など、とにかく多岐に渡る展示は色んな角度から楽しめるため、見どころは人によって、興味の方向によって様々だろう。その多角的な内容が、毒という、物質でもあるし、概念でもあるし、歴史や文学でもある「言葉」で、串刺しになっているのが面白いのだ。これこそが多様性のモデル。

アイヌが猟に使っていた、毒矢の自動発射装置「アマッポ」。実際にどのように使われていたかを見せる動画も展示されている。北海道大学博物館蔵
秩父鉱山から採れた「硫砒(りゅうひ)鉄鉱」。ヒ素が、やたらと毒殺に使われたのは、入手が簡単だったこともあったというのが分かる展示。鉱物に含まれる毒は身近過ぎる(画像提供:国立科学博物館)

 個人的には、内覧会でも撮影不可だった、身近ではあるものの中々本物はお目にかかれないアレとか、砒素鋼鉄のデカい現物とか、警告色を見せるアカハライモリとか、テントウムシを例に、毒を持つ生物同士の外見が似る現象の「ミューラー擬態」と、同じ地域に住む毒を持つ生物と毒を持たない生物の外見が似る「ベイツ擬態」を解説している展示、毒矢を使ったアイヌの矢を自動発射する道具「アマッポ」の展示と、その動作を見せる動画などに興奮してしまった。

キョウチクトウの毒に耐性を持つキョウチクトウスズメの標本。スズメガといえば映画「羊たちの沈黙」のポスターにも使われた「メンガタスズメ」が有名だが、こっちの方が強そうではある
食べてはいけないのはもちろん、触ってもダメという最恐のキノコ「カエンタケ」。菌類コーナーは、色々と見どころが多い(画像提供:国立科学博物館)

 他にも、よく見る割に強力な毒を持つキョウチクトウと、そのキョウチクトウを餌とする蛾の一種、キョウチクトウスズメの毒に耐えることで生き残る戦略や、日本人研究者によるフグ毒研究の歴史、ヒアリやセアカゴケグモなどの最近、日本の生活圏に現れた毒を持つ生物の標本、毒きのこを見分けるのがいかに難しいかを示す展示など、そこらじゅうに見どころがある。

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